2024年04月20日( 土 )

22年度、ついに延伸開業 地下鉄・七隈線が博多駅へ(3)

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安全を最優先に、4工法を駆使して工事進行

 22年度の開業を目指して、延伸工事が進められている天神南~博多区間の約1.4km(営業キロ約1.6km)だが、工事区間によって4つの工法が使い分けられている。

工事概要図
工事概要図

 まず、天神南~中間駅(櫛田神社前駅)までの区間と、中間駅から博多駅までの区間のトンネル工事については、シールド工法が用いられている。この工法は、シールド機械で地盤を掘り進み、その後方でコンクリート製や鋼製のブロックを組み立てながらトンネルをつくっていくもの。一部を除いて地上部分を大きく掘り下げる必要性が低いため、掘削中の地上部分への影響を抑えることが可能なうえ、軟弱地盤でも掘り進むことができるのが特徴で、現在では都市部などのトンネル工事(地下鉄、道路、共同溝、下水道、地下水路など)では、この工法が多く採用されている。

 中間駅(櫛田神社前駅)の施工には、開削工法が用いられている。この工法は、地面を直接掘り下げて構造物をつくった後、埋め戻して復旧するもので、地下鉄駅などの施工に適したものだ。

 そして七隈線・博多駅の施工には、ナトム工法とアンダーピニング工法という2つの工法が用いられている。ナトム(NATM)工法は地盤を掘る機械を使って横穴式に地中を掘り進み、支保で土圧を支えながら、コンクリートでトンネルをつくる工法である。もともとは山岳部などにある硬い岩盤質の地盤にトンネルを掘る工法として開発されたもので、汎用性が高く、さまざまな地質への対応が可能で、大断面のトンネルを掘るのにも適したものだ。一方のアンダーピニング工法は、既設構造物を受けながら掘削し、その下に新たに構造物をつくる工法のこと。今回の七隈線・博多駅のように、既存の構造物(博多駅地下街)のさらに地下に駅をつくる場合には最も適した工法だといえよう。

開業までのスケジュール
開業までのスケジュール

 こうした4つの工法を使い分ける一方で、前述の陥没事故を教訓として、計測の確認頻度の見直しや安全パトロールの体制強化などの安全に関する取り組みを強化。また、延伸工事のほとんどが都心部での大規模工事となるため、市民生活や道路交通などへの影響を考慮し、工事の進捗状況や交通規制情報などを積極的に市民に発信しながら、安全を最優先に工事を進めている。工事の進捗状況については21年3月末時点で、全体事業費約587億円に対する執行済み予算の割合は60%弱。

 今後は土木本体工事や軌道工事などを引き続き進めるとともに、駅建築や設備工事を本格的に進め、各種工事と並行しながら、軌道部の工事完了および電力供給開始となった段階で車両の試運転を開始。その後、開業に必要な工事・試運転が完了次第、国による開業監査を経て、晴れて開業となる予定だ。

左:櫛田神社前駅建設中のはかた駅前通りの占用状況(福岡市交通局提供)
右:天神南駅~櫛田神社前駅の電線路工事の状況(福岡市交通局提供)

  

 ここまで福岡市地下鉄七隈線の概要や、現在進められている延伸事業の経緯について述べてきた。ここからは、延伸による博多駅への接続で活性化が期待される七隈線沿線において、特筆すべきエリアの状況などについて見ていこう。

(つづく)

【坂田 憲治/立野 夏海】

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