2024年04月18日( 木 )

日本国民が不幸になる本当の理由

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「五輪は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進のためにスポーツを役立てるものであって、スポーツのために社会の運営を求めるものでない」と訴えた8月5日付の記事を紹介する。

オリンピズムの根本原則に次のように記されている。

2.オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。

4.スポーツをすることは人権の1つである。すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。

重要なことは、「人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」がオリンピズムの目的であって逆ではないこと。「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指す」ことがオリンピズムの目的。スポーツのために社会があるのではなく、社会のためにスポーツを役立てることがオリンピズムの根本原則。

スポーツ興行は利益追求の資本の論理に合致する。多数の大資本が五輪に巨額の資金を投下するのは、資金投下が利益追求に合致するから。

きれいごとで大資本は動いていない。どのような環境下でも五輪を開催してしまえば、それなりの数の人がテレビを視聴する。五輪興行は商業ベースに乗りやすいコンテンツだ。しかし、このことは五輪開催強行を正当化する事由にならない。

五輪開催が、「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」「人類の調和のとれた発展」にマイナスの影響を与えるとしたらどうか。五輪開催強行は正当化されない。

コロナの正体は横に置くとして、日本は今非常事態にある。菅内閣自身が7月12日に4度目の緊急事態宣言を発出した。菅義偉氏は記者会見で次のように述べた。

「ワクチン接種が大きく進み、新型コロナとの戦いにも区切りが見えてきたなかで、ここで再度、東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければなりません。そうした思いで、先手先手で予防的措置を講ずることとし、東京都に緊急事態宣言を今ひとたび、発出する判断をいたしました」。

「先手先手の予防的措置を講じる」の言葉は受け狙いか。「東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けなければならない」の言葉が虚しく響く。

6月21日に緊急事態宣言解除を強行し、わずか3週間で再び緊急事態宣言発出に追い込まれた。その後の感染爆発は既知の通り。

菅義偉氏のコロナ大失政が感染爆発を招いた。五輪開催強行とコロナ対応の自粛要請は完全な逆行。不要不急の五輪開催を強行して、不要不急の外出抑制をしろは通用しない。五輪開催強行で人々の行動抑制のたがが外れた。たがを外したのは菅義偉氏(「五輪強行で行動抑制のたがが外れた」(https://bit.ly/3zVGGte))

L452R変異株の感染力が強いことを再三指摘してきた。この脅威を減らすには水際対策の徹底が必要不可欠だった。ところが、菅内閣はL452R対策を徹底的に怠った。脅威の中心がN501YからL452Rに移行しているのに、L452Rを識別する体制を整備しなかった。L452R変異株が3月中旬にインドで確認されたのに、菅内閣が対応したのは5月に入ってから。

「ワクチン接種が4割に達すれば感染を収束できる」という「がせねた」に依存し、「新型コロナとの戦いにも区切りが見えてきた」と公言したのも浅はかさの極み。

昨年5月25日の会見で安倍晋三氏が「日本ならではのやり方で、わずか1カ月半で、今回の流行をほぼ収束させることができました。まさに、日本モデルの力を示したと思います」と発言したことを彷彿させる。

能力のない政府が存続すると国民は被害に遭う。政府を刷新する。それが国民の命と健康を守るための最大急務だ。

L452R変異株による感染が拡大するなかで、五輪開催を強行すれば感染が爆発することは当然の帰結。

菅内閣は7月12日に緊急事態宣言を発出した。緊急事態であるなら五輪開催が正当でないことは小学生でもわかる。その五輪開催を強行して、人々に行動抑制を求めても通用しない。国民が、自分たちが徹底的に行動抑制するから、なんとしても五輪を開催してほしいと懇願したなら理解できなくもない。

それでも、国民の命と健康を優先する政府なら五輪開催を強行しない。五輪開催が人々の命と健康に有害な影響を与える蓋然性が高いからだ。

五輪は単なる商業イベント、スポーツ興行。営利目的の興行でいつでもできる。スポーツは特別な存在でない。五輪は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進のためにスポーツを役立てるものであって、スポーツのために社会の運営を求めるものでない。

日本の主権者はコロナ感染収束を優先している。コロナ緊急事態であるなら五輪を断念する以外に道はない。しかし、菅義偉氏は五輪開催強行に突き進んだ。理由はただ1つ。自分の利益のため。

コロナ大失政で絶体絶命の局面にある菅義偉氏にとって五輪開催強行は蜘蛛の糸だった。命と健康を優先して五輪開催強行に反対するすべての国民を蹴り飛ばして、五輪開催強行という蜘蛛の糸にすがりついた。しかし、結果としてコロナ感染爆発を引き起こした。

感染が爆発すれば病床が逼迫する。挙句の果てに菅義偉氏は感染者を自宅に放置する方針を示した。「入院が必要な感染者を確実に入院治療するための措置」というのは後付けの屁理屈。その考えがあるなら、感染が低水準に推移しているタイミングで適切な説明を付して提示すべきだった。感染が爆発して感染者を自宅に放置せざるを得なくなったために泥縄で屁理屈を提示したものに過ぎない。

しかも、「入院治療が必要な人を確実に入院させることができるための措置」という説明は、宿泊療養を自宅療養に切り替える理由になっていない。

感染者を宿泊療養させて随時病院と連携できる体制にしておかなければ容体の急変に対応できない。自宅で医師の治療の手の届く範囲にいることができる感染者はほとんどいない。要するに、菅内閣が想定外の感染爆発に直面して患者遺棄、患者放置に転じただけのこと。まさに、国民の命と健康を犠牲にする菅内閣だ。原因は菅義偉氏の五輪開催強行にあった。

菅氏が「切り札」だと強弁するワクチンも対応が遅すぎた。ワクチンの確保が遅れ、連動して接種が遅れた。しかも、ワクチンは「切り札」でなく「札付き」。驚くべき数の国民が接種後急死、接種後重篤化の被害に直面している。

しかし、政府は因果関係を認めない。接種によって死亡した人には賠償金を支払うとしたが、政府が因果関係を否定すれば賠償金は支払われない。詐欺と表現して過言でない。

新型コロナワクチンは3,760万人接種時点で接種後急死者が667人、重篤化した人が3,000人程度報告されている。

季節性インフルエンザでは5,251万人接種で接種後急死者は3人(2018-19年シーズン)。3,000人の重篤化人数は3,760万人の0.008%。コロナで死亡した人は全人口の0.012%。ワクチンリスクはコロナリスクと数値の上でほぼ同等。

急死者、重篤者数値は「副反応疑い」として報告されたものだけで、医師が副反応疑いに含めなかった事例が多数漏れていると考えられる。

一刻も早く菅義偉氏を退場させることが急務。自分の利益だけを考える人物を首相の地位に就けるから国民に累がおよぶ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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