2024年04月24日( 水 )

【凡学一生の優しい法律学】自民党の常套句、高市議員の詭弁

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記者会見 イメージ 自民党総裁候補の高市早苗議員は森友問題の再調査について、現在訴訟中であることを理由に(国会または内閣が)再調査することは困難と発言した。

 こんな三権分立制度に名を借りた詭弁を公然と発表し、その詭弁性をマスコミがまったく指摘しないことも哀れというほかない。

 訴訟中の事件であるという理由で自民党が国会での議論を回避する「とんでもない詭弁」が自民党の常套句となっていることに対し、野党議員が攻撃することもない。これは野党議員がまともな「憲法感覚」「憲法理解力」をもたないことを意味する。以下で、中学生にでも理解できる高市議員の詭弁論を解説したい。

(1)訴訟事件には国会議員は誰も口出しできないのか?

 もちろん、訴訟手続きに国会議員だからといって介入することはできない。このことは中学生にでも理解できる。それこそ立法権執行者(国会議員)の司法権への不当介入である。

 しかし、訴訟事件であれ何であれ、紛争事実そのものは提訴の有無以前に存在し、その紛争事実が行政権の執行をめぐって発生したものであれば、訴訟提起の有無にかかわらず、行政権の執行について、立法権執行者の国会議員は事実究明とその適否を審議することこそ本来の責務である。

 明らかに「訴訟介入、手続き介入行為」と「本来の事実究明行為」を意図的に混同・同一視する詭弁である。しかも、何ら訴訟手続きに介入したものでない(従って裁判官に何の影響も与えない)にもかかわらず、国会議員の事実調査(国勢調査権の行使)が裁判官の判断に影響を与えるという「完全な根拠のない暴論」で、自粛を正当化する。

 こんな詭弁を公然と公表する高市総裁候補をマスコミの識者・解説者が誰1人として批判しない、できないのも、マスコミ自体が自民党の「隠れ支持者」であると非難されるゆえんである。

 少なくともマスコミは、社会の木鐸としての本来の責務を放棄していることは間違いない。

(2)三権分立における抑制均衡の誤解

 三権のそれぞれの権力発動には憲法・法律の厳格な規制(手続き規定)があり、その法律の違反がない限り、1つの権力によるほかの権力への違法な侵害は存在しない。

 裁判手続きに国会議員が自由に関与できないことは訴訟法の厳格な規定が保障しており、国会議員が裁判手続き外で当該訴訟について、いかなる言論をしても調査してもまったく問題はない。むしろ、事件によっては事実究明や再発防止の義務すらある。

 森友問題はまさに行政執行上に発生した不祥事であり、関係当事者の訴訟提起の有無にかかわらず、真実究明と再発防止に努めるのが行政権執行者(内閣総理大臣以下の国務大臣)の憲法・法律上の義務であり、たまたま関係当事者が訴訟を提起したからといって、その義務が解除されるわけではない。明らかに訴訟を口実に事実の隠蔽を目論む行為である。

 そもそも不祥事について抑制・均衡の問題は発生しない。このことを理解することが肝要であり、不祥事にこれを主張することは真実を隠蔽する詭弁にほかならない。

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