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2021年09月19日 06:00

小笹に建設中のマンションで紛争(7)田中構造設計社長の元上司・仲盛昭二氏に聞く

 田中忍氏は独立する前に構造設計会社の(株)サムシングに勤務していた。サムシングの代表であった仲盛昭二氏には、たびたび、Net IB Newsに登場していただいているが、今回は田中忍氏について話をうかがった。

(聞き手:桑野 健介)

 ――サムシングOBの田中忍氏が社長である田中構造設計が建設している中央区小笹の賃貸マンションに関して、近隣住民とトラブルになっていますが、ご存じですか。

 仲盛 田中氏はたしかにサムシングに在籍していました。小笹にマンションを建てていることは知りませんでした。田中氏は構造設計のみを行ったのではないですか。

 ――建築主・設計者・施工者とも田中構造設計となっている「アイズ小笹」という鉄筋コンクリート造11階建ての賃貸マンションを建設中です。近隣住民への事前説明を十分に行わないまま強引に着工し、工事の影響で隣のマンションとの境界にある石積みの擁壁が膨らみ、上部のブロック塀の破片が落下する事態となっていますが、田中構造設計は不誠実な対応を続けています。隣のマンション住民は福岡市に請願を提出し、工事差止の仮処分を福岡地裁に申し立てています。

アイズ小笹の建築確認等の標識
アイズ小笹の建築確認等の標識

 仲盛 田中氏が事業を成功させていることは頼もしいことだと思います。ただし、建築において、設計者と施工者は別でなければ、適切な施工の監理は難しいといえます。たとえば、ゼネコンの設計施工のマンションでは高い確率で「構造スリット」の未施工などが判明しています。構造スリットは施工に手間がかかるため、ゼネコンは嫌がります。壁を仕上げてしまえば構造スリットの有無が見えなくなるため、ごまかしやすいところです。福岡の既存マンションでも、構造スリットの未施工が判明し、デベロッパーやゼネコンの負担で構造スリットの追加工事を行った例がいくつもあります。

 ――Net IB Newsでも、「住友不動産 シティタワー大濠の施工不良のその後」にて構造スリットの追加工事を行ったマンションについて報じました。設計・監理を行う者と施工業者が同一である場合の弊害があるということですね。本来、建築主および設計者が近隣に対する事前説明を適切に実施した後、着工しなければならないところ、アイズ小笹では、近隣に対する事前説明が不十分なまま、強引に建設を進めており、抑止力が何1つ働いていないように感じます。

 仲盛 建築主・設計者(監理を含む)・施工業者の三者が、それぞれの業務に責任をもち、監視し合うことにより、適切な工事が行われます。この三者が同一の企業であれば、監視の目がないため、利益のみを最優先して手抜き工事などが発生した事例がいくらでもあります。一般的には、設計・監理者はプライドをもって業務を遂行しており、施工業者の手抜きを厳しくチェックしています。

 ――アイズ小笹の建設工事では、基礎部分の地盤改良を行った後に、北隣のマンションとの境界部分の石積み擁壁に亀裂が入り、膨らみ始めています。擁壁や上部のブロック塀の欠片がマンションの駐車場内に落下し、危険な状態となっています。田中構造設計側は、ブロック塀を地中のH型鋼に固定するという応急措置を行っていますが、隣のマンション住民は、工事の進捗につれて擁壁が崩壊するのではないかと懸念しています。

5月10日と8月3日の比較。中央部分の石積み擁壁とブロック塀が膨らんでいる
5月10日と8月3日の比較。中央部分の石積み擁壁とブロック塀が膨らんでいる

 仲盛 地盤改良体下の地耐力(地盤が支持できる重量)を算出する際には、基礎や地盤改良体が周囲の地盤に拘束されることを前提にDf効果(根入れ効果)を見込みます。根入れ深さ(地表から基礎や地盤改良体下面までの深さ)が深いほど地耐力が大きくなります。

 石積みの擁壁が膨らんでいるということは、Df効果が見込めない状態となっており、建設が進み11階建ての建物の軸力がかかってくれば、相当な圧力が擁壁に作用します。当然、アイズ小笹の地耐力算出においては、Df効果を見込んではいけないのですが、恐らく、Df効果を見込んだ設計となっていると考えられます。

 隣のマンションの住民には、アイズ小笹の設計図書(図面・構造計算書)を入手し、地耐力について調べられることを勧めます。図面や計算書を見て判断できる人がいなければ、私が協力しても構いません。田中構造設計は工事をどんどん進めていると聞きましたが、擁壁が崩壊する前に直ちに工事を中断し、補強や再構築などの対策を行わなければ取り返しのつかない事態になります。住民の方は、福岡市に掛け合って一刻も早く設計図書を入手されるべきです。

 ――元の社員である田中氏が設計したアイズ小笹の設計図書を調べることに、仲盛氏が協力されるということですか。

 仲盛 サムシングは、かつて、民事再生法の適用を受けることとなり、社員や得意先に迷惑をかけました。その後、耐震問題も起きて世間で話題となりました。私は耐震問題については、やましいことはなかったと主張し続けてその根拠も示してきました。サムシングの社員だった人々は肩身の狭い思いをしたかもしれませんが、田中氏も含め、それぞれの立場で活躍してほしいと願っています。しかし、今回のアイズ小笹に関する近隣住民の不安、それに対する田中氏の不誠実な対応を聞いて残念に思います。少しでも住民に寄り添った協力をできればと考えています。

(つづく)

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