2024年04月18日( 木 )

コロナ禍から離陸しない日本とダイナミックな経済回復を遂げた米国(前)

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画家・造形作家 佐藤 雅子 氏

 2021年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率5.1%減となり、実質GDPは年率換算で534.3兆円とコロナ感染拡大前である20年1~3月期の544.3兆円に届かない。一方、米国は実質GDPが同6.4%増と経済が急回復し、ほぼコロナ前の水準まで戻っている。コロナ禍から離陸しない日本とダイナミックな経済回復を遂げた米国の違いは、どこにあるのか。ニューヨークに在住し、米国を見つめ続けてきた画家・造形作家の佐藤雅子氏に聞いた。

ニューヨークの街
ニューヨークの街

メリハリある危機対応で経済活動を再開させた米国

佐藤 雅子 氏
佐藤 雅子 氏

 経済回復とコロナ感染対策を同時に行うことはできない。外出自粛のなかでGoToトラベルを実施するなどあいまいな政策を取った日本では、コロナ前の日常がまだ戻らない。しかし、米国はメリハリのある危機管理を行った。ニューヨークはコロナ発生時に、患者が見つかったニューロシェル地域に州兵を派遣して大胆に街を閉鎖し、ロックダウンを発動して外出禁止令により感染拡大を阻止。南部や中西部の州などからニューヨークへの移動も最近まで厳しく制限した。こうした徹底的な封じ込め作戦が功を成し、速やかなワクチンの普及とともに、経済活動が再開してコロナ前の日常が戻っているようだという。

佐藤雅子氏の作品「Alectrona」
佐藤雅子氏の作品「Alectrona」

 佐藤雅子氏は「米国は国を挙げて積極的かつ迅速に政策を行い、人々が危機感をもって感染対策に努め、ワクチンを早く普及させたことが景気を早く回復できた理由でしょう。日本は治療薬やワクチンもなく、東京などで新規陽性者数、入院患者数が増加するなかでも政府がGoToキャンペーンを後押しするなど、米国のように明確な姿勢が見られず、徹底した危機管理ができているとは感じられませんでした。つい最近まで、25%、50%など収容率を決めて美術館を開館していた米国とは異なり、日本の美術館ガイドラインでは入場制限を何%に留めるかという明確な基準がないなど、国民の協力に支えられた『自粛』頼みであることも懸念されます」という。

 米国では今、ワクチンが普及するにつれて社会が劇的に変わり、コロナ前の日常が戻りつつあるという(6月時点の接種率約53%)。心理的なプレッシャーからの解放感、安心感から人々が外出して外食や買い物をするようになり、右肩下がりだった経済も21年1~3月期の個人消費が前期比10.7%増と回復傾向にある。ニューヨークでは、ワクチン接種とPCR検査陰性を証明するアプリ「エクセルシオール・パス」を提示すると、イベントやビジネスの場、美術館、娯楽施設に入ることができる。5月19日から、ワクチン接種完了者はビジネスや公共の場(公共交通機関など一部を除く)でマスク着用やソーシャルディスタンスの確保を不要とし、31日からレストランの営業時間規制も解除された。

 米国と欧州はワクチンパスを利用して、観光の行き来もできる。「日本は、いかにワクチンを早く普及させてコロナ前と同じ生活に戻せるかが、経済再建の決め手になるでしょう(6月時点の接種率約18%)。福島第一原発事故以降、ようやく好調な伸びを見せていた海外からの観光を復活させるためにも、受け入れ体制を迅速に整えることが必要ではないでしょうか」(佐藤氏)。

佐藤雅子氏の作品「INISHIE (古)」
佐藤雅子氏の作品「INISHIE (古)」
佐藤雅子氏の作品「Aphrodite」
佐藤雅子氏の作品「Aphrodite」

(つづく)


<プロフィール>
佐藤 雅子
(さとう・まさこ)
 2014年の香港Asia Fine Art Galleryの「New Year Exhibition」をきっかけに画家/造形作家として活動を開始。ニューヨークへ移住後、さまざまな展示会の審査に合格し、賞を受賞しながら活躍の拠点を広げる。なかでも、ニューヨーク・マンハッタン区長オフィスアートショー、The Art Students League of New York の栄誉あるブルードット賞、Bronxville Women’s Club での最優秀賞は新聞、ビデオでも放映された。日本では16年に東京都美術館でのグループ展示会にて入賞。17年には新国立美術館、19年には東京都美術館、20年には代官山や銀座、今年9月には国立新美術館(東京・六本木)で出展した。マニラ、ロンドン、ワシントンDC、カイロ、香港、そしてニューヨークでの生活を通して育まれた感性と知覚を活かし、ユニークな色彩感覚と想像力を使い作品をつくり出している。上智大学新聞学科卒業後、Citibank に入行、その後、画家・造形作家に転身。数々のポスターや商品のデザイン、雑誌の挿絵、港区立白金小学校の図書館の壁画なども手がける。ニューヨークの名門The Art Students League of New Yorkのメンバー、MoMAのアーティストメンバー、上智大学ソフィア会文化芸術グループ、現代造形表現作家フォーラムメンバー。12月に昭和記念公園(東京・立川市)で立体作品の展示を予定している。

(中)

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