2024年03月29日( 金 )

【BIS論壇No.355】編著『加速する中国、岐路に立つ日本』、味読すべき卓見

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は2021年10月5日の記事を紹介。

中国 DX イメージ テレビでも活躍しておられる東洋学園大学教授で国際アジア共同体学会副理事長の朱建栄先生から先日、編著『加速する中国/岐路に立つ日本:ポストコロナ時代のアジアを考える』(花伝社)を送呈いただいた。

 帯には「中国GDPは一挙に米国の7割強、コロナ禍を克服、なおも経済成長を続ける中国、コロナを抑え込んだ『ハイパー監視社会』の実態。第4次産業革命(AI、自動運転、ビッグデータ、5G)の展望。脱・対米依存、東アジア連携の道を探る。『新しい』中国の台頭、世界はどう変わるか」などと記載されている。

 8人の著者の力作論文が収められているが、このなかの古林将一氏(華鍾コンサルタント)の「ポストコロナ時代の中国におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)」と、朱建栄先生の「コロナ:国際関係と未来の世界への影響」を中心に見ていきたい。

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 古林氏は「コロナ感染拡大で、各国で緊急事態宣言の発令やロックダウンの措置が取られ、人々の生活や経済活動に多大な影響がおよんだ。感染拡大を防止しながら、経済活動を元に戻すことが各国での喫緊の課題となった。中国ではIT技術を駆使してこの難題に取り組んだ結果、2020年5月の労働節からオンライン、オフラインを融合したさまざまの大規模イベントなどアフターコロナ対策としての経済活動ができるようになった」と説明している。

 その結果、21年10月5日現在の中国の感染者数は10万8,588人、死者4,849人。これに対し、日本は感染者170万6,643人、死者1万7,772人と人口10倍以上の中国に比べ、コロナ制御で大幅に出遅れている。韓国の感染者数32万1,352人、死者2,524人と比べても日本のコロナ対応は出遅れが目立つ。医療先進国と喧伝されてきた日本の対応はICTの活用も含め、アジアで後進国的な対応ぶりであり、猛省が必要だ。

 朱建栄先生の提言は「日本は危機感なき茹(ゆ)でガエルの様相」と手厳しい。「日本の対中外交への4つの提言」は一考に値する。参考までに以下に要約を紹介する。

 中国は米国からのバッシングを逆手に取り、危機意識をもって国内をまとめ、第4次産業革命の成果を大胆に取り入れた。10年以内に米国と肩を並べる国を目指している。これに比較し、本来は技術の進歩を一番の国是とすべき日本は、未来に向けた心構えができているのだろうか。

 米国は長期的に見て次第に衰退し、中国が台頭するというビッグトレンド、大きい趨勢を感情抜きに把握する必要がある。日本は第4次産業革命の波をもっと深く認識し、日本自身の努力目標を定める必要がある。

 日本でDXを取り入れた企業は20年時点で8%しかない。中国は36.2%を占める。日本は中国への「建設的なアドバイザー」になってほしい。日本は外交、とくに対米外交においては「是々非々主義」を取るべきで、アジアとの共同繁栄に努力すべきだと力説されている。味読すべき卓見である。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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