2021年12月08日( 水 )
by データ・マックス

山口FG経営陣は経営ができるのか?

東大OBの結束力

 東京のある企業再生コンサル会社を訪問した際の話。同社の代表は東大卒。林芳正前参議員議員(今回は衆院選に立候補)の「応援会」会長を長きにわたって務めている。林氏の10年先輩で、アメリカ滞在中に家族ぐるみの付き合いが始まった。

 その関係で山口フィナンシャルグループ(FG)前会長兼CEO・吉村猛氏とも懇意にしているという。代表の話はこうだ。

 「林、吉村両氏は高校も同期、予備校も同じ釜の飯を食った仲。東大にも同時に入学した。親密で尊敬し合う間柄である」。

 「吉村君は改革派として、将来に向けて金融機関の経営戦略を講じていた。ところが、守旧派たちが追い落としを仕掛けて成功したのである。とても許されるものではない」と吉村氏を擁護する。

 これを聞いて筆者は、「東大卒の、企業再生コンサル事業で成功した経営者の発言か」とあきれ返った。「東大OBの偏った見解」との侮蔑の念も抱いた。

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 余談であるが、詐欺師・正下文子氏とも懇意にしているという。「正下さんにはお世話になったから企業紹介も行った。礼儀正しい人です」と話し、「彼女は第一生命と山口銀行に利用された被害者である」と続けた。

 代表の話を聞いて、「どのような情報からこんな結論に至るのであろうか」と不思議に感じた。

吉村氏の自爆で助かる

山口フィナンシャルグループ 山口FGが14日に発表した調査報告書を読み返しながら、経営陣は今後、経営を維持できるのか疑問に思えてきた。ただ、疑問を感じつつも、頭の整理がつき始め、「吉村氏は改革派」という説を支持する気持ちになった。

 というのは、吉村氏の山口銀行頭取就任時の取材において、「ITを駆使した金融経営が求められるのではないか?」という質問を投げかけたところ、「従来のやり方では銀行の将来はあり得ない」との回答が返ってきていたからだ。吉村氏はその後、いろいろな外部の助言者の提案を吸収しながら、「金融機関の未来の在り方」に関する戦略を構築していく。

 ところが、吉村氏は自身の勘違いにより、蹉跌(さてつ)をきたすことになった。彼を頭取へ引き上げてくれた田中耕三氏を目の当たりにして、「最高のポストに就けば誰もが従う」と錯覚したのである。

 だから、身近な女性に手を付けて公私混同のポストをつける、家族ぐるみの付き合いがあるコンサル会社経営者に1億円超の年収保証を行うなど、独善的な決定を行ったのだろう。当然、社内では不信・不満が鬱積(うっせき)するようになる。

 筆者は「田中耕三師匠からなぜ学ばなかったのか」と遅まきながら言いたい。故・田中氏は労務対策のプロであり、根回しには天才的な術を駆使する。要するに、餌を与えることに類まれな策謀を練る。

 「おやじ(田中氏)の下で忠誠を尽くせば、自分にとって良運となる」という信者を数多く生み出し、長期政権につながったのである。この権力維持の要諦をなぜ学ばなかったのか。「権力には誰もが従う」と安易な錯覚を抱いた吉村氏の幼児性にはあきれ返る。これでも東大卒かと…。

 山口FGの当事者たちには、速やかに吉村氏と決着をつけて、「新時代の経営方策を打ち出す」ことが問われる。

 改革派が無断独走すると、守旧派から足元をすくわれて自滅する。だが、守旧派が実権を握っても運営方針を提起できないまま壁にぶつかる――この流れは珍しいことではなく、山口FG経営陣が立往生する可能性が濃厚であると予想される。「地元とともに歩む金融機関」というきれい事を掲げても、金融機関の経営は成立しない。

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