2022年01月18日( 火 )
by データ・マックス

山口FGの吉村猛取締役の辞任勧告を検証する(7)

 山口FGは10月14日、吉村猛前代表取締役会長兼CEO(以下、吉村氏)に対する「社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ」を発表。

~7月26日付けの調査報告書について~
山口FGは調査報告書で、吉村氏に対し以下の7つの告発事項を公開し、取締役辞任の勧告をしている。これまで(1)~(5)を検証してきた。今回は、(6)「業績の悪化」を検証していくことにする。

(1)第一生命保険事業への関与
(2)地方創生プロジェクトの失敗~独断専行~
(3)ワイエムライフプランニングの失敗
(4)行員軽視、蔑視の姿
(5)外資系経営コンサルタントとの癒着
(6)業績の悪化
(7)不適切な女性関係

告発事項(6) 「業績の悪化」について
~この文書からみえるもの~
◆この様な吉村氏の専横政治に嫌気がさし、山口フィナンシャルグループの将来に不安を持った多くの行員がグループを去り、残った行員も最悪の状態にある。グループ業績にもその影響が表れている。グループ業績は表面を取り繕っているものの、有価証券の売却益(益出し)を巨額に捻出し、実態利益は、地銀の中でも危険水域グループのところと同様な水準にある。
 2020/9月期の山口フィナンシャルグループの経常利益から、国債等関係益・投信解約益・株式等関係益による利益積み増し(益出し)、その他の同様なものを除くと、ほぼゼロに近い。2020/12月期においても低位に留まっている。一方、IR資料では、「益出し」とは見えないような表現をしており、銀行関係者の間ではこれは粉飾決算ではないかとの声もあがっている。なお、その「益出し」余力も年々低下してきているのが現実である。

◆調査結果によると、
(1)2020年3月期については、与信費用の増加により有価証券損益に依存した決算内容となったと告発事実を認めている。
 しかし、2021年3月期の経常利益370億円は概ね前期比横ばいであったが、有価証券損益が減少(145億円)した一方で、邦貨預貸金損益が増加(+84億円)しており、経常利益は150億円となっているため、告発事実の「危険水域グループ」との指摘は認められないとしている。(【表1】、【表2】参照)
(2)IR資料に記載されている表現などにおいて、隠蔽的または意図的な誤導は認められない。また財務諸表についても、あずさ監査法人の会計監査を受け、「無限定適正意見」も示されていることから、粉飾決算とは認められないとしている。
(3)政策投資株式売却状況については、毎期相応の売却益(2018年度34億円、2019年度101億円、2020年度111億円)を計上。株式売却益の余力が低下していることは認めている。

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◆適切性評価によると、(1)山口FGにおいては、株式売却益の余力が低下している中で、預貸金収益をはじめとした本業収益の強化、および新規事業収益の強化が喫緊の課題であることは言うまでもない。ただこの苦境は、超低金利・国内人口の減少・低成長・デフレの長期化等の客観的な経済・経営環境に起因する地方銀行全般の問題であり、吉村氏個人の責任に帰すべきものではないとしている。
(2)吉村氏が、上記課題を正面から受け止めて、世間も金融庁も注目するような様々なチャレンジを行っていることは事実であり、吉村氏の経営姿勢は評価されるべきものであるとしている。

出典:山口FGホームページ「社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ」P62~63
出典:山口FGホームページ「社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ」P62~63

【表1】山口FGの21の年3月期経常利益について(出典:山口FG、2021年3月期決算会社説明会)

【表1】山口FGの21の年3月期経常利益について(出典:山口FG、2021年3月期決算会社説明会)

【表2】山口FGの21年3月期の有価証券関連収益について(出典:山口FG、2021年3月期決算会社説明会)

【表2】山口FGの21年3月期の有価証券関連収益について(出典:山口FG、2021年3月期決算会社説明会)

【表3】は中国5県の国勢調査(10月1日現在)による人口推移表である。
~この表から見えるもの~
◆2020年の国勢調査による中国地方の人口は725万9,431人と、2015年の前回調査から17万8,606人(2.4%)減少した。5つの県すべてで人口が減り、減少率は前回(1.7%)から拡大している。
・県別で見ると、広島県は1.5%減の280万1,000人。岡山県は1.7%減の188万9,000人。山口県は4.4%減の134万2,000人。島根県は3.3%減の67万1,000人。鳥取県は3.4%減の55万3,000人。
・山口県の減少率は前回より1.2ポイント拡大の4.4%減と、5県のうちで最も高い。
・表にはないが、山口県の市町村で人口減少数が大きかったのは、山口FGの本社がある下関市で25万5,199人(-1万3,318人)。同市の減少率は全国で8番目にランクしている。

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<まとめ>
 山口県の2020年10月の国勢調査による人口は中国5県のうち前回調査比-4.4%、また10年前の調査と比較すると-7.5%となっており、減少率が最も高いことがわかる。
 そのため、吉村氏は世間も金融庁も注目するようなさまざまなチャレンジを行ったが、いずれも失敗に終わっている。山口FGは7月26日付けの調査報告書の適切性評価では、吉村氏を擁護する記述も見られたが、9月30日付調査報告書では、吉村氏の新銀行設立を含む多くの権限逸脱行為を報告しており、それが10月14日付の吉村氏に対する辞任勧告となったのは間違いないようだ。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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