2024年04月24日( 水 )

本格スタートの韓国大統領選挙(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

与党の勢いに衰えが

韓国国旗 イメージ 現職の韓国大統領である文在寅(ムン・ジェイン)氏に代わる新大統領が誕生する韓国の次期大統領選挙は2022年3月9日に予定されている。その大統領選挙に向けた最大野党「国民の力」の公認候補者として、11月5日に前検事総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が選ばれた。これで次期大統領選挙に立候補する二大政党の候補者が出そろった。与党「共に民主党」は、10月に李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事を候補者に選出、いよいよ韓国大統領選挙が本格スタートすることとなる。

 革新勢力と保守勢力が、激しくぶつかり合う5年に1度の選挙の幕が切って落とされた。各候補の予想勝率をみると当初は与党候補である李氏が有利だったが、野党の大統領候補決定後の韓国ギャラップの世論調査では、政権交代を求める声が優勢となったせいか、尹氏が一歩リードしている。11月6日の最新の世論調査では、与党の李氏が31.2%。野党の尹氏が43.0%となっており、与党の勢いが衰えている感が否めない。こうした背景には就職もできず、不動産の高騰により家を買うことも難しくなった若者の不満が募っていることが挙げられる。今回の大統領の勝敗のカギは若者が握っており、若者に背を向けられた与党は厳しい闘いを強いられそうだ。

韓国で大統領になること

 韓国の大統領の任期は5年で、再選できないようになっている。選挙法を改正して大統領に再選できるようにしようとの動きもあったが、現在のところ大統領の任期は1回限りである。韓国の大統領は、国会に対して予算案提出権や法案の拒否権をもち、公務員や憲法裁判所所長、裁判官、大法院長(最高裁判所長官)などの任命権がある。また、政府、軍、公共機関、公企業など約2万人の幹部級人事を決める人事権を握るなど、絶大な権力を握っている。

 韓国の大統領がこのような強力なパワーをもつようになった背景には、北朝鮮と対峙しているため、大統領に権力をもたせて速やかな対応ができるようにしなければならないことが要因の1つとして挙げられる。また、数百年続いた李朝時代の伝統が受け継がれているとの指摘もある。

 権力の集中により、大統領辞任の際に悲惨な末路を迎えた例も多い。韓国の元大統領のうち、4人が刑務所に入り、そのうち2人は現在も服役中だ。本人が刑務所に行かなくても、子息や側近が収監された例もある。自ら命を絶った大統領もおり、諸外国からみると韓国大統領の末路は理解に苦しむことだろう。

 間違いが明るみに出たときには、たとえ元大統領だったとしても刑務所に送ることが韓国発展の原動力になってきたと解釈する向きもあるが、はたしてそれが良いことなのかどうか。後世、歴史家による検証が必要だろう。

(つづく)

(後)

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