2024年04月20日( 土 )

ベトナム首相訪日、岸田内閣初の首脳級賓客 日越関係強化への期待

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ベトナム、進むワクチン接種、経済との両立を図る。

 ベトナムのファム・ミン・チン首相が明日から25日まで来日し、岸田文雄首相と会談する。岸田内閣発足後、初の首脳級の賓客という。昨年9月に就任した菅義偉首相は翌10月に初の外遊先としてベトナムを訪問しており、双方がお互いに関係を重視していることがうかがえる。

 昨年、ベトナムは新型コロナウイルスの感染を抑え込み、優等生とみなされていた。実質GDP成長率は2.91%増で過去10年で最低となったものの、プラス成長を達成していた。今年は変異株の脅威やワクチン接種の遅れから感染者が急増、ホーチミン市などにおいてロックダウンを実施した。これにより、日本においてベトナムから部品を仕入れている商品の品薄状態が出現するなど影響が出ているが、裏を返せばそれだけ両国の経済関係が深化し、日本企業のサプライチェーンの多元化が進んでいた証でもある。

 ワクチン接種に関して、ベトナム政府関係者によると、現在は進んでおり、11月7日時点でワクチン総接種回数は9,000万回以上、18歳以上の人口の83.8%以上が少なくとも1回目の接種を終え、18歳以上の人口の40%以上が2回目の接種を終えている。そして、今後はコロナ感染防止と社会・経済の発展を両立させることに自信を示す。

 今年4月に就任したファム首相は、8月に副首相に代わり新型コロナ予防国家指導委員会の委員長に就任。ロックダウンやワクチン接種の効果により感染者が減少してきたことを踏まえ、経済・社会活動の制限緩和を進めるとともに、10月11日にはコロナ政策の新たな指針となる「Covid-19を効果的に抑制し安全かつ柔軟に共存する」ための臨時措置に関する決議第128/NQ-CP号を公布した。同決議は国民の健康と生命を最大限保護し、社会・経済の回復と発展、社会の安全と秩序を確保することを目標として掲げ、国全体においてできる限り早期(年内)にニューノーマル(新常態)を実現するとした。「共存する」とあるように、ここでいうニューノーマルとはウィズコロナであり、ベトナム政府は感染防止と経済・社会活動の両立を模索していくということだ。

貿易、投資はコロナ禍でも好調

 コロナ禍による困難にもかかわらず、日本は依然としてベトナムへの投資を大幅に増やしている。今年1月〜9月、日本企業によるベトナムへのFDI(対外直接投資)は認可額で32.7億米ドルであり、ベトナムが同期間に受け入れたFDIの14.7%を占めており、また総額は昨年同期比94.9%増となった。日本のベトナムへのFDIの累計総額は629億米ドルで第3位となっている。輸出入では、1月〜7月、両国の輸出入総額は245億米ドルに達し、前年同期比11.9%増となった。

 コロナ禍で海外にサプライチェーンを持つ企業のなかには、調達先の変更、生産拠点の再配置を実施・検討している企業もあるだろう。ベトナム国内の生産活動が正常化し、各国との貿易が活発な状態に戻れば、ベトナムは日本の投資家を含む外国人投資家にとって有望な国であり続けるのではないか。今回のファム首相の訪日が、日越関係の今後にどのような実りをもたらすか、注目される。

【茅野 雅弘】

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