リッツ・カールトン開業でどう変わる?雑多さ魅力・若者のまち「福岡・大名」(中)
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急カーブ存続の陰に、大物政治家の威光
ところで、現在の西鉄グランドホテルの前、明治通りと天神西通りが交わる天神西交差点において、明治通りがやや不自然な急カーブを描いている。これは、前述したように江戸期の町割の名残ともいえるが、実は一度、この道を直線化しようとした動きがあったという。それは1907(明治40)年ごろに、市内での路面電車敷設計画がもち上がったときのこと。当時の福岡市は、路面電車の線路を今の明治通りを通るかたちで敷設しようと計画し、件の急カーブもその際に直線化しようとした。
だが、その際に障害となったのが、同地にあった赤煉瓦造りの「カトリック教会」。市側は教会に対して土地の譲渡交渉を行ったが、当時のフランス人神父・ベレール氏は、「福岡の人々と仲良くしたいが、神の与え給う土地は失われぬ」「所有者はローマ法王庁なので、私一存では計らえぬ」と丁重に断った。市側はなおも執拗に交渉を重ねたが、ベレール神父は東京の司教総代エブラール神父に助力を求め、エブラール神父が働きかけたのが、後に内閣総理大臣となる政界の大物・原敬氏だった。最終的に、原氏による“鶴の一声”で、福岡市側は教会土地の取得および急カーブ解消を断念。そのため当時、まちの人々はこのカーブを「ベレールさんの曲がり角」と呼んでいたという。
なお、後にカトリック教会の赤煉瓦造の教会建物は久留米市の聖マリア病院に移築されたが、教会自体は「カトリック大名町教会」として、現在も天神西交差点を臨む場所に存在し続けている。
【坂田 憲治】
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