警固神社の社務所ビル建設計画、まちづくり視点で神社機能を再定義
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守り続けるための経営
警固神社は、25年ごとに式年遷座祭を行っている。「式年」とは定められた年を意味し、「遷座」は社殿の装いを新たにすることをいう。俗的にいえば、神社を守り続けるための必要な改修・補修工事ともなるが、その費用の捻出は神社の歳入や氏子からの奉賛によって賄われる。しかし現在、神社建築を支える宮大工の技術は特殊で高額なものとなっているが、社会風習の変遷や神社を支える氏子の減少により、近年は多くの神社が財政困難な状況に陥っている。
神社経営における歳入は、御祈願料や地鎮祭などの祭典料、お賽銭などから構成されるが、これらだけで神社を維持することは容易ではない。宗教法人における宮司は、株式会社でいえば代表取締役にあたり、その法人の代表責任を負う役職となる。
警固神社で宮司を務める前田安文氏(61歳)は、同社の外に宗教法人6社の宮司を兼務しているが、連綿と続いてきたお宮を維持するためには建物や植栽などの管理は必要で、それらの費用を捻出する運営が宮司には求められる。費用が発生する以上は歳入を確保することが重要で、歳入不足が慢性化してしまえば神社を守る後継者は途絶えてしまうであろう。警固神社の新社務所ビル建設は、その背景に現代の神社が抱える根本的な課題があり、持続可能な神社運営を具現化するものとしても計画されている。
神社機能の再定義
神社は日本固有の宗教である神道の神々を祀る施設で、人々が感謝の気持ちを神さまに伝えに参拝する場所である。過去には地域コミュニティの中核を担った時代もあるが、現在は初詣や結婚式、七五三など生活の節目で訪れる場所であり、社会変容により神社の役割は変遷してきたが、その存在意義は日本人の意識に深く根差している。
2005年3月に発生した福岡県西方沖地震の際には、神社に多くの人々が避難に集まるなど、地域の防災拠点としての機能も見直されている。災害時のトイレ開放、水害時の避難場所の提供など、周辺にオフィスが集まるその立地環境から、警固神社には公益的な役割も期待されている。今回の新社務所ビル増築工事では、歩道が狭い国体道路側に当たる建物をセットバックし、バス停の利用客が休息できるスペースも新たに確保した。また、近年発生が増加傾向にある自然災害への対策として、自家発電機を設置するなどの防災機能強化も計画に盛り込まれている。
また、警固神社境内は「特別緑化保全地区」に指定されていることから、今回の建物の階数や意匠については福岡市行政との綿密な打ち合わせが行われ、地域防災や地域振興の強化に寄与できる施設として計画されている。参拝者、地域住民、地域行政、さらには地域の観光機能や商業機能にとって良好で充実した施設を創出したいとする警固神社の取り組みは、まちづくり視点による神社機能の再定義として、これからの神社の在り方について、1つの指針を示すものになるのではないだろうか。
(了)
【児玉 崇】
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