2024年03月29日( 金 )

人々の想いを結晶化し、地域が自走するきっかけづくりを――

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(株)SALT

地域が自走できるために

 ──21年10月末にインキュベーション施設としてリニューアルオープンした古賀市・薬王寺温泉の「快生館」の運営のほか、各所でコワーキングスペース&シェアオフィスを手がけられています。こうした施設の運営にあたって、留意されている点は何でしょうか。

 須賀 私たちは現在、シェアオフィスSALTや古賀市の快生館、16年に開業した「HOOD天神」の福岡3拠点、そして東京7拠点の施設運営を行っています。主に自治体やデベロッパーなどの民間企業と連携したかたちで、コワーキングスペースなどの立ち上げから、ある程度事業が軌道に乗るまでの一定期間支援を行っていくものですが、とくに留意しているのは、ゼロからイチを生み出せる人材を、どれだけ育てていけるかです。

 たとえば自治体からの依頼の場合、地方創生の補助金などが出て、我々が一緒になって運営している期間はそれなりに熱量をもって取り組んでくれて、地域の活性化などにもある程度は貢献するのですが、補助金交付が終わり、我々への委託契約期間も終わると、その熱量を持続していくことが難しいケースも散見されます。大事なのは、何でも我々におんぶにだっこではなく、地域の人々がいかに自分たちで考え、熱量をもって取り組んでいけるようにするかです。

 極端な例になりますが、たとえば発展途上国への支援を行う際に、資金や物資だけ与えても、あっという間にそれを消費して終わりとなってしまいます。しかし、技術やノウハウなどの自活できる仕組みを教えることで、その国の人々が自ら経済を回していけるようになります。それと同じように、こうした施設でも我々が伴走している期間に、地域のためにゼロからイチを生み出せるプレーヤーを1人でも多く育て、いかに地域の人々自らが真剣に地域のために取り組んでいくよう促せるか――。地域が自走できる体制を整えていくこと、その仕組みづくりが大事だと考えています。

代表取締役 須賀 大介 氏
代表取締役 須賀 大介 氏

    ──ほかに、遊休不動産の活用プロデュースや、空き家を活用した宿泊施設運営など、埋もれてしまった地域資源に再び光を当てる取り組みも行われています。

 須賀 たとえば、イタリアには「アルベルゴ・ディフーゾ」というものがあります。日本語に訳せば「分散した宿」という意味になるのですが、街中のレストランなどを窓口にして、まちに点在する空き家や民家などに泊まれるような仕組みのことです。いわば、まち全体がホテルというような考え方で、ただ泊まるだけでなく、その土地の人々や文化、歴史などに直に触れられるのが醍醐味となります。このシェアオフィスSALTでも同じように、周辺の空き家などを再生した宿泊施設と連携させて、ここを拠点に宿泊+ワーケーションのようなコミュニティ型のまちづくりに取り組んでいるほか、遊休不動産に新たな価値を見出して再生・活用するような取り組みも行っています。

 地域を元気にしていくためには、単に外から人が来ればいいというものではなく、外の人と地元の人とがうまく結びつき、共に悩み、考え、助け合いながら、新たな価値を創造していくしかありません。我々も、プレーヤーをつなぎ・育てる場づくりを行いながら、ご縁のあったさまざまな人の想いを結晶化してかたちにし、地域を元気にしていくお手伝いをさらに進めていきたいと思います。

【坂田 憲治】


<プロフィール>
須賀  大介
(すが・だいすけ)
1976年7月、茨城県水戸市生まれ。明治大学商学部卒業後、IT系ベンチャーで勤めた後、2002年に(株)スマートデザインアソシエーションを設立して代表取締役CEOに就任。東日本大震災発生をきっかけに12年8月に福岡へ移住し、13年12月には「福岡移住計画」を立ち上げた。21年10月に社名を(株)SALTへと変更。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:須賀 大介
所在地:福岡市西区今宿駅前1-15-18
    マリブ今宿シーサイドテラス2F
設 立:2003年10月
資本金:1,800万円
URL:https://way.salt.today
 

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