2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

検証・山口FG「調査報告書」(1)

 山口フィナンシャルグループ(FG)をめぐるスキャンダルは、吉村猛前会長を辞任に追い込んだことで一件落着のように見える。だが、山口FGは健全化したのだろうか。同社が公表した「調査報告書」を検証し、一連の事件の本質を紐解く。

吉村氏が恣意的と指摘した「調査報告書」

山口フィナンシャルグループ    NetIB-Newsの報道が発端となった山口フィナンシャルグループ(FG)をめぐる問題は、全国を騒がせる事件に発展。昨年12月、吉村猛前会長の取締役辞任によって事態は収拾したかのように見える。

 この間、吉村氏の側近だった執行役員が解任や降格になるなど、熾烈な内部抗争が展開されたと推測される。今年1月の人事異動では、愛人といわれていた女性が閑職に異動。それまでチヤホヤしていた連中が、今では掌を返したように冷酷な対応を取っていると想像できる。

 吉村氏に多くの問題があったことは事実だろう。しかし、吉村氏が指摘したように、株主を欺き、クーデター計画が練られていたことも事実ではないだろうか。この件はダイヤモンド・オンラインがスクープとして報じているが、山口FGは黙殺したままである。また、NetIB-Newsが報じた新銀行計画のスタッフを偽装雇用している問題についても口を閉じたままだ。その一方で、昨年末には社外取締役の弁護士が、大手新聞社や経済誌のインタビューで言い訳とも受け止められるような説明を行っている。

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 山口FGが健全化されたようには見えず、若い社員・行員によって地域社会に貢献する銀行グループとして再生することを願うばかりである。NetIB-Newsでは、吉村氏が恣意的と指摘した「調査報告書」を検証し、この問題を振り返る。

公正といえない調査メンバーの人選

 昨年6月、クーデターによる吉村会長(当時)の解任によって全国の注目を集めた内紛劇は、半年にもおよぶ長期戦となった。この間、権力を掌握したクーデター側は吉村氏に取締役辞任を求め、10月14日に「調査報告書」を公表した。

 「調査報告書」は、7月26日付の報告書と9月30日付の報告書の2部構成。全68ページにもおよぶ大作である。不思議なことに9月の報告書が前、7月の報告書が後となっている。通常ならば日付順に掲載するのではないだろうか。

 しかし、読み進めるうちにその意図が読めてくる。9月の報告書は吉村氏の経営者としての資質を厳しく指摘しているが、7月の報告書では吉村氏の倫理観を問うような内部告発を証拠不十分とし、擁護するような内容となっている。アイフルとの新銀行や証券会社との提携は問題であるが、愛人問題はただの噂話に過ぎないというのだ。多くの内部告発があり、社内・行内では周知の事実でありながら、である。

 前半で吉村氏の経営者としての資質を問い、後半でスキャンダルを否定することで、吉村氏には経営能力がなかっただけという結論を導きたかったのではないか。

 7月の報告書ではさまざまな資料を用いて問題はなかったとしているのだが、恣意的に資料が使用されており、9月の報告書と矛盾する箇所も見受けられる。結論ありきで、意図的なストーリーに仕立てたために無理が生じたのではないだろうか。

 7月の報告書の調査委員会メンバーは5名。委員長は日弁連会長も務めた高名な梶谷剛弁護士であるが、調査時の年齢は85歳。はたして詳細な調査にどこまで加われたのか疑問だ。ほかの4名は社外取締役3名と福田進・取締役監査等委員(社内)。いずれも吉村氏の会長解任に賛成票を投じており、福田氏に至ってはクーデターの黒幕といわれている。このようなメンバーでは公正な調査を期待することが難しく、「恣意的」との指摘は免れられないだろう。

 9月の報告書はさらに露骨だ。調査本部長に福田氏、副本部長には田辺修司・専務執行役員監査部長が就いた。監査等委員と監査部長は実務で密に連携を取っており、福田氏の意向を強く反映させた調査となったことは容易に想像できる。また、アドバイザーとして中央総合法律事務所の弁護士3名が加わっているが、どこまで直接調査に踏み込んだのかは見えてこない。

 次回以降、調査報告書の内容について検証していく。

※山口FG「調査報告書」(PDF)
山口FG「調査報告書」(PDF)

(つづく)

【特別取材班】

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