2022年05月28日( 土 )
by データ・マックス

検証・山口FG「調査報告書」(10)

 山口フィナンシャルグループ(FG)をめぐるスキャンダルは、吉村猛前会長を辞任に追い込んだことで一件落着のように見える。だが、山口FGは健全化したのだろうか。同社が公表した「調査報告書」を検証し、一連の事件の本質を紐解く。

おわりに

山口フィナンシャルグループ 7月26日付の報告書の総括として、吉村猛氏はやや不適切ではあったものの、大きな問題はなかったと結論づけている。吉村氏を高く評価する記載もあり、これだけを読むと会長解任に至った理由は不可思議である。

 9月30日付の報告書では、唐突にアイフル社との新銀行問題が追及され、解任の大きな理由とされた。7月時点で多くの事実が判明していたはずだが、7月の報告書ではまったく触れられていない。当初から9月の報告書が計画されていたと考えた方が自然ではないだろうか。

 また、7月の報告書で引用された内部告発文は、クーデター側が準備したものではなかったのだろうかという疑問もある。内部告発文には多くの不自然な記述が見受けられる。あとから否定できるような内容とし、解任後には無用とする手はずだったのではないか。そう考えると、記載されている内容に作為的なものを感じた点も合点がいく。

 そして何よりも、NetIB-Newsに寄せられた内部告発と比べて生身の人間の姿を感じないのである。寄せられた山口フィナンシャルグループ(FG)関係者の声は、苦しみや悲しみ、怒りが伝わってくるものばかりであった。一方、報告書が引用した内部告発文は、上から目線による高圧的な物言いであり、真摯に問題を解決したいとの意思は伝わってこず、人工的なものとさえ感じる。

 山口FGの椋梨敬介社長は、コンサルティングを行う子会社のYMFG ZONEプラニングでの実績が認められ、吉村氏に抜擢されたという。しかし、この会社の売上の多くは行政の助成金であり、いうなれば税金の横流し。本当に適切なコンサルティングが行われているのかを検証すべきだろう。

 また、椋梨氏が社長を務めていた当時の枢要な社員は退職しており、その原因は椋梨氏のパワハラとの証言もあった。「組織風土の改革」をどの口がいうのかと思っている社員・行員も多いのではないか。

 福田進・取締役監査等委員による新たな支配体制が築かれたという証言もあった。山口高校の後輩で、子飼いのHを山口FG執行役員として呼び戻し、企画統括本部長(兼)人事・総務統括本部長としている。経営企画と人事という枢要管理部門を押さえるとは大胆である。企業のガバナンスとしては大いに問題であろう。

 このため、新たな恐怖政治を心配する声も聞こえてくる。下関西高校(吉村氏)と山口高校(福田氏)という、上層部の学閥争いであったという声も。あるいは、東京大学(吉村氏)に対する山口大学閥(椋梨氏も、早稲田院卒と公表しているが学部は山口大学)の逆襲という見方もあった。

 吉村氏の子飼いで人事・総務統括本部長だったY執行役員は、昨年6月の株主総会後に常務執行役員に昇格後、数カ月でヒラ執行役員に降格となった。現在は、多くの問題を抱え鬼門とされているリテール事業本部長であり、冷や飯を食わされていると思われる。Y執行役員は強引な残業カットや意図的な人事考課で人件費の削減を強行し、吉村氏に評価されたといわれている。従業員の生活は急激に苦しくなり、恨みを買っているようだ。同じく吉村氏の子飼いで執行役員CEO室長であったWが解雇されたことを考えると、会社に残れただけマシなのかもしれない。なんとも時代錯誤の権力闘争と言える。

 今回の取材を通して驚かされたのは、問題に関わったとされる中間・末端の社員が何人も退職していたことだ。被害者側も加害者側も含まれる。トカゲの尻尾切りのように従業員を切り捨て、問題に正面から向き合わず隠蔽するような企業体質はすぐには変わらないのかもしれない。

引き続き注視

 NetIB-Newsでは、勇気ある社員・行員の方々からの情報提供により、吉村氏の取締役退任に至るまで情報発信を行うことができた。感謝したい。

 だが、山口FGが健全化されるまでにはまだまだ時間がかかるものと思われ、今後も同グループを注視していく考えだ。同社が真に地方に貢献する地域金融機関として再生され、地元住民から愛される企業となることを望む。

※山口FG「調査報告書」(PDF)
山口FG「調査報告書」(PDF)

(了)

【特別取材班】

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