2024年04月20日( 土 )

「フル規格化」へ課題も、西九州ルートが今秋一部開業(後)

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 九州新幹線西九州ルート・武雄温泉~長崎が今秋、部分開業する見通しとなった。福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線の整備計画決定は1973年11月。半世紀近くの迷走を経て、最新鋭の新幹線車両が走る。博多~長崎は最速80分で結ばれ、今より30分短くなる。

【新大村駅】起爆剤の再開発事業

新大村駅を挟み東西で進む新大村駅周辺土地区画整理事業の様子
新大村駅を挟み東西で進む新大村駅周辺土地区画整理事業の様子。
人口増の起爆剤として期待が膨らむ
(=2020年10月末ごろ撮影
(大村市HPの「まちづくりニュース第14号」を抜粋))

 新幹線・新大村駅は在来線・JR大村線新大村駅との併設となり、大村市には新幹線の車両基地が置かれることとなる。西九州新幹線は、全国初のFGTが走る計画だった。市はFGTの車両基地は観光に使えるとみて、JR九州に大村線大村車両基地駅の追加を要望。FGTのとん挫で市の思惑は空振りしたが、新駅は新幹線と同時開業する。

 大村市は、戦国時代はキリシタン大名の城下町として、戦前は世界有数の飛行機生産工場の軍都として、今では大村湾に浮かぶ海上空港の長崎空港の存在によって、長崎県の「空の玄関口」として知られている。人口は1970年以降、半世紀近く増加を続け、05年以降は年500人ペースで増加。現在は9万6,000人。当面は「25年度の人口10万人」を目指す。起爆剤に見込めそうなのが、市が新大村駅の東西で取り組む駅周辺土地区画整理事業(施行区域9.4ha)。施行期間は16年10月から27年9月まで。市は21年6月から2カ月間、長崎県から取得した駅東側の県立聾学校跡地2.5haを対象に提案型プロポーザルで開発事業者を募集し、3つの事業者グループが応募した。市は今年1月下旬に優先交渉権者を発表し、3月ごろに基本協定を結ぶ予定だ。

 跡地利用では、考えさせられる出来事があった。長崎大学と大村市が、25年をメドに長崎大学情報データ科学部(長崎市・文教キャンパス)を大村市へ移転する話を進めた。20年6月に双方が移転協議入りの覚書を結んだのだが、大村市が、同学部の土地・建物を整備し、学生宿舎の土地を無償で貸し付け、移転費用も負担する条件だった。しかし、大学側が毎年の学部運営費の一部負担を市に打診して、市議会が反発。大学側でも他学部との兼ね合いから、長崎市内の適地を探すべきとの意見が浮上して大村移転が消えた。

 若者定住を想定した大村市の破格の呼び込みを、長崎大学が袖にした結末だった。新幹線開業後、長崎、大村間は15分ほど。大学を絡ませる地域浮揚は、新幹線が走ったとしても容易ではない現実を突き付けた。

【南里 秀之】

(前)

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