2024年03月29日( 金 )

TPP交渉差止・違憲訴訟

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 NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、5月15日に東京地裁で起こされたTPP交渉の差し止めと憲確認を求める訴訟について触れた、5月16日付の記事を紹介する。


 TPP交渉差止・違憲訴訟の会が5月15日、国を相手に国を相手に、TPP交渉の差し止めと憲確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。提訴は、環太平洋経済連携協定(TPP)が日本国憲法の定める国民の生存権や幸福追求権などに違反するものだとして、「TPP交渉の差し止め」と「違憲確認」を求めるものである。
 原告は「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の1,063人。原告には、山田正彦元農林水産大臣、原中勝征元日本医師会会長のほか、衆議院議員の照屋寛徳、阿部知子、玉城デニー、仲里利信の各氏、参議院議員の福島瑞穂、主浜了、糸数慶子、山本太郎の各氏が加わった。私も原告団に加わった。
 「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人は、こちらに列挙されており、メッセージも記載されている。
 私が提示したメッセージは以下のもの。
 「TPPは世界を支配する強欲巨大資本が日本を収奪するための枠組みで、日本国民に甚大な不利益をもたらすものである。また、ISD条項は日本の国家主権を損なうもので、日本のTPP参加は許されない。安倍政権が国民を欺き、強欲資本の手先となってTPPに参加することを、国民が連帯して阻止しなければならない。本会が日本のTPP参加阻止に大きな役割を果たすことを期待する。」

 米国では連邦議会米上院が5月14日、TPP交渉の妥結に不可欠な大統領貿易促進権限(TPA)法案の本会議での審議を求める動議を可決した。12日には否決されていたが、民主党議員が妥協して可決された。賛成は共和党から52票、民主党から13票の合計65票で、超党派の支持で可決に必要な60票を確保した。
 労組や中間層を支持基盤にする民主党ではTPP反対論が根強いが、オバマ大統領はTPAへの反対意見の薄い民主党上院議員をホワイトハウスに呼び出すなどして、13人の民主党議員を賛成に寝返らせることに成功した。
 オバマ大統領の任期満了まで残された時間は2年を切った。このため、実績(レガシー)作りに懸命であり、TPPはその最重要ターゲットになっている。議会でTPPを推進しているのは共和党で、オバマ大統領が民主党を分断してTPP妥結にこぎつけようとしていることが、奇妙なねじれとなっている。

 民主党議員はTPPが米国の雇用を奪い、環境破壊や食の安全を脅かすとして反対を表明している。さらに、TPP参加国の為替操作を禁じる条項を盛り込むべきであるとの主張が存在し、この条項の取扱いにも関心が集まっている。そして、この「為替条項」こそ、TPP早期妥結のカギを握るポイントになっていると考えられるのだ。

 14日に審議入りを決める動議が可決されたが、動議を可決させるために取られた手法は、為替操作国との通商を制限する案を、TPA法案と切り離して採決するというものだった。動議の採決に先立って、為替操作国との通商を制限する案が可決されたため、動議が可決されたのである。
 上院は来週にもTPA法案の修正を協議して採決に持ち込む構えだが、為替条項が可決されたこともあり、TPA法案の修正が拡大する可能性があり、決着に時間を要するとの観測も根強い。また、下院(定数435)では、オバマ大統領に通商交渉の権限を一任することに対して共和党議員も抵抗感を示しており、共和党245議員のうち40~80人がTPA法案に反対する見通しである。
 このため、TPA法案可決には民主党から数十人以上の賛成が必要になる。
 さらに、TPPに為替条項が盛り込まれることになる場合、TPP交渉参加国の多くが妥結に反対する可能性があり、TPP交渉妥結は、まだ現段階で明確には見えていない。

 安倍政権は2012年12月の総選挙で「TPP断固反対」のポスターを貼り巡らし、「ISD条項に合意しない」ことを公約に明記しておきながら、この公約を踏みにじる行動を示している。日本の民主主義を守るためにも、このような暴挙を断じて許してはならない。
 主権者が声をあげ、行動を示して、日本のTPP参加を絶対に阻止しなければならない。

※続きは5月16日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1147号「百害あって一利なしのTPPを必ず粉砕する」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 

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