2024年04月20日( 土 )

形骸化する国会審議打破する主役は主権者自身

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 政治経済学者の植草一秀氏は5月21日、安倍政権が憲法を無視した政策を強行するがゆえに国会審議が本来の存在意義を見失い形骸化している状況を自身のブログで指摘している。その状況は主権者に今後どのような行動をとるべきかという問題を提起している。


 国会で党首討論が行われた。安倍首相は集団的自衛権行使の容認について一般論を述べることに終始して、詳細を明言することを避けた。つまり「ごまかし」である。

 たとえば、安倍氏はこう言う。

 「一般に海外派兵は許されていない。武力の行使、戦闘行為を目的として海外の領土、領海に入ることは許されない」「海外派兵は許されない」

 「海外の領土、領海で武力行使はしない」とは述べない。「言葉の詐術」なのだ。

 TPPのことを思い出していただきたい。2012年12月の総選挙で、安倍自民党はどんなポスターを貼り巡らせたのか。「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!日本を耕す!!自民党」これが安倍自民党の選挙ポスターだ。選挙から3カ月後、安倍晋三氏はTPP交渉に参加する記者会見を行った。そういう人物なのである。「詐術」「トリック」「トラップ」「ペテン」なのだ。

 集団的自衛権行使の三要件とは、

1.わが国の存立が脅かされ、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利が根底から覆される明白な危険があるとき、
2.他に方法がない場合、
3、必要最小限度の武力行使等が認められる。

 こんな規定はあってないようなものだ。

 具体的規定ではなく、抽象的な規定であるから、運用によって内容をいかようにも変えられるのだ。

 だが、根本の問題は、これが日本国憲法に明らかに反していることだ。日本国憲法は、「国際紛争を解決する手段として」「国権の発動たる戦争、武力の行使、および武力による威嚇」を「永久に放棄する」ことを定めている。「集団的自衛権の行使」とは、まさに、「国際紛争を解決する手段として」「国権の発動たる戦争、武力の行使、および武力による威嚇」を実行することであるから、いかなる要件を設定したところで、憲法に反することは明らかであり、ごまかすことは許されないのだ。

 憲法を踏みにじる政治、立憲政治を破壊する政治がまかり通っている。党首討論をやっても、野党側から、安倍政治の暴挙を叩きのめすという、意志も熱意もまったく伝わってこない。国会審議は審議をしたという「アリバイ」作りの場にしかされていない。
 ごく短時間の審議をしたことにして、最後は多数決=数の論理で押し通す。その姿勢が鮮明である。
 安倍首相は「新三要件」読み上げるだけだが、新三要件など何の歯止めにもならない。抽象的な言葉の羅列であるから、解釈の余地は無限大なのだ。「水のたまっている場所」と規定しても、それが「小さな水たまり」なのか「太平洋のような大海」であるのかはっきりしない。具体的に明言しないのは、曖昧さを意図的に残すためである。
 「一般的に」の言葉は、「一般的ではないケース」の存在を念頭に置く言い回しだ。「~を目的として派兵しない」は、「別の事情での派兵はあり得る」ことを示唆するのだ。「ペテン政治」に対応するには、細かな部分の厳密性、明示が必要不可欠なのだ。

 いまのまま進めば、安倍政権の「やりたい放題」は加速する一方である。

※続きはメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1150号「形骸化する国会審議打破する主役は主権者自身」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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