2024年04月25日( 木 )

【再開発】人気の住宅地・姪浜ができるまで

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 福岡市西区の姪浜駅周辺地区は、古来より長崎・唐津を結ぶ唐津街道の重要拠点としての役割をはたしてきた。だが、高度経済成長と人口増によって市街地が無秩序化しつつあったことから、区画整理事業が急がれ、現在は区役所などを擁する西区の中心部としての地位を築いている。姪浜はどのようにして生まれ、どのように発展を遂げてきたのか――地域の歴史とともに振り返ってみよう。

姪浜駅
姪浜駅

漁村から炭鉱、商業へ

 福岡市西区の「姪浜」エリアは、元々は索漠たる一漁村だったが、漁獲量の増大にともなって部落が拡大・発展していったのが、まちづくりの始まりと言われている。ちなみに今も「姪浜漁港」(愛宕浜4丁目)は名称として残っている。

 また姪浜は、福岡と長崎・平戸を結ぶ唐津街道の「宿駅」が置かれたことでも、繁栄してきた。江戸時代には黒田藩が入府すると、唐津街道からの福岡入り口の宿場駅としてさらに栄えたという。

 1889年に自治制が敷かれ「早良郡姪浜村」、93年に「姪浜町」となった。1914年に「姪浜・福岡炭鉱(株)」が設立されてからは炭鉱町としても栄え、33年4月に早良郡姪浜町から福岡市に編入・合併された。

 当時は、現在の明治通り沿いを姪浜から都心天神を経由して博多以北に至る路面電車、また平尾方面を経由して博多に至る旧・国鉄筑肥線が走っていたほか、路線バスも運行していた。余談だが、旧筑肥線は、郊外鉄道的なもので市街地を離れた外回りの単線の路線であり、しかも運行本数も少なかったため、市民の足としては通勤・通学に便利な路面電車や路線バスが利用されていたようだ。

 このような歴史的背景もあり、交通インフラが充実していたことから、40年前後までは現在の姪浜駅から北側(現・姪の浜地区)中心に栄えていた。しかし、45年6月の福岡大空襲では、博多や天神などの中心市街地だけでなく姪浜も罹災。また、50年代中盤以降は高度経済成長とともに自家用車が普及したことで、住宅化の波は周辺市街地からさらに郊外へと向けられた。

 そして、姪浜と天神・博多を結ぶ地下鉄の建設、および姪浜駅で現・筑肥線と相互乗り入れするという計画が発表されてからは、地下鉄開業を見越した住宅化が、姪浜駅以南の地域に集中することとなった。

 その後、姪浜駅南側の不燃物処分場として埋め立てられた市有地に、西区役所などの公共施設が整備されたことで、姪浜は西区の中心かつ広域的拠点として、充実発展すべき地区となった。

ウエストコート姪浜と姪浜駅南地区
ウエストコート姪浜と姪浜駅南地区

区画整理事業の背景

 姪浜駅の南側(55.7ha)に新西区役所や西市民センターなどの行政施設が開設され、姪浜は新しい西区の行政・商業の中心となった。市の資料でも「姪浜は福岡市の西部の交通拠点としての役割をはたす地区であり、姪浜駅はその中心であった」(福岡市発刊 姪浜地区区画整理)とある。

 姪浜地区は将来の道路計画から見ても、福岡都市高速道路1号線や国道202号バイパスをはじめ、井尻姪浜線およびこれらを連結する豊浜十六町線など、福岡市の主要幹線道路の結節点となり、市西部における交通の拠点になることが期待されていた。

 その一方で、姪浜駅を中心にして無秩序で細分化された宅地化が進行しつつあり、地下鉄の開通を機にその傾向が顕著になると懸念され、77年には都市計画基本構想の策定および事業調査が決定された。さらに西九州自動車道や都市高速道路が計画され、その整備が進むとともに同地区への人口集中や交通量の増大が予見され、懸念材料はより増えることとなった。

 このため福岡市は、以下の4つの整備を主とした土地区画整理事業を本格的に進めることとした。

①幹線道路・駅前広場の整備による交通拠点としての機能強化
②駅周辺に商業空間を造成することによる商業機能の高度化
③幹線道路と生活道路の整備による無秩序な市街地形成の防止
④地域住民のレクリエーション、コミュニティの場として公園の整備

【麓 由哉】

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