2024年04月20日( 土 )

「東京大地塾」ウクライナ侵攻で激論(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 地域政党「新党大地」代表で「日本維新の会」副代表でもある鈴木宗男参院議員は、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を毎月開催している。最近は3回連続で、ロシアのウクライナ侵攻を取り上げた。

 自らのブログ「ムネオ日記」や「われ『ロシアの工作員』と呼ばれようとも」(月刊日本4月号)と題する記事などで鈴木氏は、ロシアの侵攻は厳しく非難されるべきと指摘したうえで、「話し合いによる解決を拒んだのはゼレンスキー大統領ではないか」「ロシアを糾弾するだけでは日本の国益は守れない」とも主張してきた。「ゼレンスキー大統領=善、プーチン大統領=悪」という単純な二元論で割り切るのではなく、多角的な視点で今回の侵攻を捉えながら早期停戦を訴えている。

 「大地塾」は毎月1回、東京と札幌で開催されるが、永田町の参議院議員会館で開かれる「東京大地塾」には、元外務官僚で作家の佐藤優氏が同席している。

(左から)佐藤氏、鈴木氏
(左から)佐藤氏、鈴木氏

 3月23日の会合でも、佐藤氏は「ロシアが間違っていることをしているのは自明」と指摘したうえで、ロシアがどういう考えをもっているのかを知ることの重要性も強調。そして、米国の対応についてこう述べた。

 「私は今のアメリカに戦略があるとは思えない。この戦争をできるだけ長引かせて、ロシア人が残虐なことをするのを示すことによって、ロシアの立ち位置を弱くする。それ以上の戦略はないと思う」。

 続いて佐藤氏は、「ロシア、平和条約交渉打ち切り 日本の制裁に反発」(3月22日付の日経新聞)と題する記事を読み上げながら、岸田首相の政治決断に対するプーチン大統領の報復だったという解説も加えた。

 「岸田首相はロシアと全面対決する腹を固めています。外務官僚がどうこう言って岸田さんが動かされている図式ではない。岸田さん自身の政治決断です。対露関係の悪化を決定的にしたのは、日本政府が3月1日にロシアのプーチン大統領に対して個人制裁をかけたこと。

 日本における個人資産の凍結を決定したが、多分、外務省でも読み違いがあったと思う。『どうせプーチンは日本に土地や預金をもっていないから大した意味はない』と考えたと思う。これが一番の間違い。日本にプーチンさんの資産が大量にあるならば、凍結するのは実質的な意味があるのでロシアも理解するが、資産がないのに凍結したのは、『おまえとは付き合わない』というメッセージを岸田首相が出したとプーチンは受け止めたのです。

 今回のロシアの対抗措置は、プーチン大統領自身のイニシアティブによる岸田さんへの報復です。ここは軽視すべきではない。だから岸田さんがいる限り、あるいはプーチンさんがいる限り、日露関係は動かない。もう、そういう展開になってしまった。ただ問題は、そういうケンカを売ったという意識が岸田首相にあるのかどうかです」。

 プーチン大統領への個人制裁については、鈴木氏も同じように問題視。『月刊日本』の記事で、次のような岸田政権批判を展開している。

 「岸田政権は欧米と歩調を合わせてロシアに経済制裁を科し、3月1日にはプーチン大統領の個人制裁に踏み込んだ。だが、これは岸田総理がプーチン大統領に対して『私はあなたと付き合う気はない』と宣言し、ロシアとの対話を拒否したに等しい。これでは、これまで積み重ねてきた領土交渉・平和条約交渉が完全に中断してしまう恐れがある」。

 両氏の問題提起を受けて、筆者は質疑応答で次のような質問をした。

 ──「ロシアのウクライナ侵攻はおかしい」という一方で「ウクライナ側にも責任がある」という発言は非常に貴重と思うが、なぜ維新全体として同じようなことを言わないのか。あと、アメリカべったりの岸田政権に「日本の国益を損ねるのではないか」と苦言を呈してもいいと思うが。

 鈴木宗男氏(以下、鈴木) ロシアの侵略侵攻、力による国家主権の侵害はいけない、あるいは領土の拡張はいけない、これを前提にしての話です。同時に、なぜ、ここに至ったのかは双方に問題があるのではないか。「喧嘩両成敗」と言っても先に手を出した方が負けではないか。

 しかし結果として、その要因をつくった人も問題だとして、それなりの注意なり、けん責を受けるのではないか。皆さん、たとえば交通事故を起こしたとき、青信号でこちらが行っていても赤信号なのに飛び出してきた車があり、事故となります。当然こちらに過失はなくても、実際は100%保険は下りません。私はそれを言っているのです。力で攻めた方が悪い。先に手を出した方が悪い。しかし、その原因をつくった側にもいくばくかの責任があると私は言っている。

 佐藤優氏(以下、佐藤) 今最大の問題になっているのは、均衡を失するほどロシアのやっていることが激しくなってしまったこと。今の保険金でいうと、「20%くらいは引かれる」のではなくて、たしかにこっち側にも問題があるけれども、「全額持たせないといけない」というくらいの侵攻をロシアがやっている。ロシアは1種の妄想社会に入り出している。1種の被害妄想で、僕は、ロシアの総合ニュースを見ていて驚いた。というか、背筋が寒くなった。どうしてかというと、ロシアが「ウクライナの研究所で生物兵器をつくった」というでしょう。

 その先の解説で、「ゲノムでウクライナ系ロシア系の人間のゲノムだけを集めている。アメリカのやろうとしているのは、特定の民族に対して感染症をつくるゲノム研究ではないか」ということを真面目に言っているわけです。西側だったら皆がフェイクニュースと笑い飛ばすような話なのだけれども、ロシア人たちはかなり信じてしまっている。政治エリートたちも。一種の病的なところがある。

 この思い込んだ時のロシア人の怖さがあるのです。だから、今言っていることがどんどんエスカレートして、滅茶苦茶なことをロシアはやっている。そうすると、通常であれば、ウクライナ側の瑕疵も言って、その両方の問題を見ないといけないのが、今ロシアがやっていることが本当に極端なことになってきたから、そこのところについて議論すらできないようなひどい状態になっている」。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

(2)

関連記事