2024年03月19日( 火 )

露呈し始めたDeFi(分散型金融)のリスク(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

DeFi(分散型金融) イメージ    仮想通貨の活用分野の一つとして、DeFi(分散型金融)が注目を集めている。DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)とは、ブロックチェーン技術を用いることで金融機関を介さずに仮想通貨で金融取引を行う仕組みのことだ。

 DeFiが注目され、盛り上がりを見せた最大の理由は、既存の金融サービスでは考えられないほどの高い収益性があるからだろう。

 日本の金融機関にお金を預けた場合、利子率は年0.001%前後である反面、DeFiサービスの場合、年率4%前後といったケースはざらである。また、銀行などの管理者を必要としないため、手数料が安く、迅速な取引が可能なことも、DeFiの大きな魅力だろう。

 ビットコインのような仮想通貨も、ブロックチェーンの技術を活用することで、第三者の仲介なしに、個人間同士で送金はできていた。しかし、DeFiは送金だけでなく、仮想通貨の交換、融資、証券、保険、デリバティブ、DEX(分散型取引所)など、より複雑なサービスを提供できる。

 銀行口座をもっていない人が、現在世界には17億人ほどおり、銀行にお金を預けることも、銀行からお金を借りることもできない。しかし、DeFiなら、信用履歴審査や本人確認などが不要で、スマートフォンとインターネットさえあれば、金融機能が十分ではない国や地域でも、誰でもサービスを利用できる。

 DeFiの最も一般的なサービスといえば、仮想通貨の融資を仲介するサービスだ。そのようなサービスの代表例はCompoundとAaveだ。Compoundでは、ユーザーが保有する仮想通貨を預け入れして利子を得たり、イサリウムなどの仮想通貨を担保にいれ、ステーブルコインを借りたりすることができる。ステーブルコインの場合、価格が固定されているため、自分で保有していても、利子が付かないが、そのステーブルコインを預け入れして利子を得るわけだ。また、イサリウムの価格上昇が想定された場合、イサリウムを担保にいれ、ステーブルコインを借り、借りたコインを運用することで、収益を上げることもできる。利子率は通貨ごとに異なるし、需給バランスに応じて変動する。

 DeFiには、仮想通貨の交換サービスがある。旅行などに出かける際、銀行で円をドルに両替してもらう。銀行はいくつかの通貨を用意しておき、両替手数料を取り、サービスを提供する。DeFiにも同様のサービスがあり、その代表格がUniswapだ。Uniswapではアルゴリズムで仮想通貨の交換比率が計算され、仮想通貨が交換される。DeFiは金融インフラを構築するために莫大な投資をせずとも、公開されたオープンソースを活用することで、さまざまなサービスの提供が可能になる。

 すでに存在するコードをもってきて接続するだけで、いくらでもサービスを追加できるので、仮想通貨だけではなく、すべての金融取引を行う世界をつくることが可能だ。その意味で、DeFiは大きな可能性を秘めているし、次世代の金融サービスとして注目されているのだ。

(つづく)

(後)

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