2024年04月25日( 木 )

軍拡か平和外交か~沖縄知事選・参院沖縄選挙区

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玉城デニー沖縄県知事
玉城デニー沖縄県知事

    「沖縄県知事選(9月11日投開票)」の前哨戦と位置づけられる参院選沖縄選挙区が6月22日に公示された。いずれも辺野古新基地反対の「オール沖縄」が推す現職と自公支援の新人が激突する構図で、抑止力強化(軍拡)路線か平和外交路線かという対立軸も同じだった。

 防衛費倍増の岸田政権(首相)への対抗心を露わにしたのが、6月11日に県知事選出馬を表明した玉城デ二―・沖縄県知事だ。冒頭の決意表明で抑止力強化(軍拡)路線に釘を刺す発言をしたことから、続く質疑応答で県知事選の争点について「『防衛費倍増』『台湾の有事は日本の有事』という自民党が推す候補だと、抑止力強化、軍事力強化路線の方に行ってしまうような気がするが、そういうことを対立軸にしていくのか」と聞くと、玉城知事は次のように答えた。

 「基地があるところは必ず有事になったときには相手の標的になることは、戦争の原則的な戦い方だ。だから抑止力を強化しても本当に平和的な外交につながるのかということは恐らく、いろいろな方々の認識が分かれるところだと思う。しかし私は、それまで沖縄県が重ねてきた平和的な外交、とくに中国・韓国・台湾・東南アジアの国々とも歴史のなかでも信頼関係をつくってきたから、沖縄は沖縄から平和たる拠点として、『平和こそ大事ですよ』ということを若い方々に伝えたいと思う」。

 出馬会見後の囲み取材でも、私は同主旨の質問をしてみた。ハト派のイメージを醸し出す岸田首相だが、“安倍忖度政権”と揶揄される通り、実態は「台湾有事は日本の有事」「防衛費倍増」と繰り返すタカ派の安倍首相と同じと考えられるためだ。

 ──岸田総理について一言、安倍・菅政権に比べてどうか、(ハト派のイメージで防衛費倍増を言い出すなど)さらに危険な存在なのか。

 玉城知事 おそらく安倍総理、菅総理のときに比べてウクライナの状況も考えると、非常により、何というのでしょうか、国防論についての意識といいますか、それが少し色濃くなっているのではないかと思う。

 しかし、日本の立ち位置を絶対に私は「平和外交の重視だ」ということのほうが、これまでのアジアの国々との関係を戦後77年かけて修復してきたことを瓦解させることになりかねない危惧さえ感じています。ですから、そういうことを考えると、中国に3万3,000社あまりの法人企業の拠点が置かれていること、そして日本にとって中国は貿易国第1位、中国は日本が第2位です。これまで築き上げてきた経済のかたちそのものまで影響をおよぼすことは、もう有事を想定すると、そこまで影響をおよぼすことは間違いない。そうなると、日本全体の国民の暮らしはどうなるのかという視点も、私は絶対に見落としてはいけないと思う。

 ということを岸田総理はぜひ、広島から選ばれた総理大臣ですので、その平和への思いを「反核」への信念をしっかりと表明されてはどうかと先だって総理とお会いした時もそのような話をしました。今こそ、広島・長崎・沖縄から平和を発信していくことの重要性が増している時代というか、タイミングなのではと思います。

玉城デニー氏沖縄県知事選出馬会見の様子
玉城デニー氏沖縄県知事選出馬会見の様子

 ソフトな言い回しだが、「被爆地・広島出身の総理大臣が、軍拡(抑止力強化)邁進の安倍路線を引き継いでいいのか」という強烈な皮肉と批判が込められた発言といえる。と同時に、そんな“安倍忖度政権”とは正反対の「平和外交路線」を目指すと宣言したようにも聞こえた。これが沖縄県知事選の一大争点になるのは確実で、その前哨戦の参院選沖縄選挙区でも対立軸になるのだ。

 玉城知事とともに辺野古新基地建設に反対する現職の伊波洋一参院議員は、米軍はすでに沖縄が戦場になることを想定していると6月12日の名護市での街宣で訴えていた。

 「いま行われている南西諸島の軍事化は極めて危険。アメリカは(沖縄から)引こうとしている。沖縄が戦場になろうとしているからです。だから沖縄に来る海兵隊は今、もう家族はともなわない。私たちが平和に暮らしていると思っている沖縄が、アメリカが戦場にしようと狙っている地域になってしまっている。それに日本政府が同意をしている」

 伊波氏も玉城知事と同様、「台湾有事は日本の有事」と捉えて軍拡に走るのではなく、沖縄が戦場となる米中戦争を平和的外交交渉で回避しようという考えなのだ。

 一方、防衛費倍増の岸田政権支援の古謝玄太候補(自民公認・公明推薦)は同日(12日)に名護市など3か所で街宣。「現実的な安全保障体制を築いていく」と訴えるだけで、防衛費倍増を批判することはなかった。参院選沖縄選挙区と沖縄県知事選に共通する対立軸が浮き彫りになる。それは、軍拡邁進の岸田自民党が推す新人候補を選ぶのか、それとも平和外交路線を目指す現職を選ぶのかということだ。2つの重要選挙の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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