2024年03月29日( 金 )

「飯塚×ゆめタウン」「小郡×コストコ」進出の影響いかに(前)

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実店舗のインパクト、いまだ健在

 今年4月、福岡県内で2つの大型商業施設が相次いで開業を迎えた。1つは前号(vol.48/5月末発刊)で紹介した「ららぽーと福岡」(福岡市博多区、4月25日開業)であり、もう1つは本誌46号(3月末発刊)で紹介した「THE OUTLETS KITAKYUSHU(ジ アウトレット北九州)」(北九州市八幡東区、4月28日開業)だ。

 どちらも開業後すぐに大型連休を迎えたこともあり、開業当初から多くの来場者が訪れて相応の賑わいぶりを見せたようで、それぞれスタートダッシュには成功した模様だ。前号で触れたように、ららぽーと福岡の周辺では、新規の開発も誘発されている。ネット通販の台頭によって実店舗の領域が脅かされて久しいが、かように大型商業施設の開業が周辺エリアにもたらすインパクトは、いまだ健在のようだ。

 そもそも日本においては、1968年10月に開業した「香里ショッパーズプラザ(ダイエー香里店)」(大阪府寝屋川市)が初の郊外型の大型商業施設だといわれている。モータリゼーションの進展による車社会の到来や、消費者の生活スタイルの変化、中心市街地から郊外への人口流出などを背景に、広大な敷地に駐車場を確保した郊外型の大型商業施設は支持を集め、次第に旺盛に開発されるようになっていった。その後、大規模小売店舗立地法によって開発が急増した一方で、今度はまちづくり3法(改正都市計画法、大規模小売店舗立地法、中心市街地活性化法)の改正によって逆に開発が抑制されるなど、紆余曲折を経ながら現在に至っている。

 大型商業施設がもたらす影響については、賛否両論があることは周知の通りだ。とくに郊外型大型商業施設が開業した影響で、商店街をはじめとした中心市街地の衰退や空洞化が進むケースは全国各地で多々ある。その一方で、進出にともない地域の雇用創出や交流人口の増加が進むほか、施設周辺の土地開発が進むことで新たな住宅地が生まれ、人口増などに寄与するケースもある。

 今回、大型商業施設の開業が新たに予定されている福岡県内の2つの地方都市を取り上げ、改めてその進出が地域にもたらす影響について論じてみたい。

「ゆめタウン」開発に向けて解体工事が進む卸売市場跡地
「ゆめタウン」開発に向けて解体工事が進む卸売市場跡地

飯塚市

飯塚初のシネコン併設、23年夏開業のゆめタウン

 飯塚市菰田・堀池地区にある飯塚市地方卸売市場(以下、卸売市場)跡地では現在、「ゆめタウン飯塚」の開発に向けて、既存施設の解体工事が進んでいる。

 ゆめタウン飯塚は、(株)イズミが展開する総合スーパー(GMS)「ゆめタウン」業態としては筑豊エリア初出店となる施設で、開業は23年夏を予定している。卸売市場跡地の6万6,771.36m2(青果部跡地3万1,091.16m2、水産物部跡地2万6,278.83m2、花き部跡地9,401.37m2)の敷地に、延床面積9万5,902m2の地上4階建ての建物を計画しているが、敷地が道路を隔てて3カ所に分かれており、建物は青果部跡地と水産物部跡地の間の道路をまたぐかたちで建てられる。1・2階部分に約8,800m2の直営店のほか、飲食店・フードコート含めた専門店が約90店舗入居。また、平面駐車場のほか、屋内・屋上駐車場、1階部分のピロティ駐車場を合わせて2,305台分を確保する。その最大の特徴は、3・4階部分に飯塚市内で初となるシネマコンプレックス(複合型映画館/シネコン)が入ること。現在、飯塚市内には映画館が1軒もなく、最寄りの映画館となると、イオンモール直方(直方市)やトリアス久山(久山町)、イオンモール福岡(粕屋町)まで足を運ばねばならない。飯塚市民にとってシネコン併設の大型商業施設の開業は、待望のものだといえるだろう。

 ゆめタウン飯塚の開業に向けては、まず20年11月に飯塚市とイズミとの間で立地に関する協定を締結した。立地協定書のなかには、「時間消費型エンターテインメント施設の立地に向けて相互に協力する」旨が盛り込まれているほか、「中心商店街との連携による相乗効果の発揮」「公共交通機関と連携し、拠点内で歩いて暮らせる都市構造の実現」といった内容も付されている。さらに、今年3月には飯塚市の「まち・ひと・しごと創生事業」に対して、企業版ふるさと納税としてイズミが3,000万円を寄付。今後、ゆめタウン飯塚の開業を契機として、飯塚市とイズミとが連携して地域活性化を進めていく方針だ。

 卸売市場跡地を大型商業施設へと再開発する計画は、青果市場跡地を再開発してできたららぽーと福岡を彷彿とさせる。ゆめタウン飯塚の場合は、はたして地域にどのような影響をもたらすのだろうか──。

【坂田 憲治】

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