2024年04月26日( 金 )

福岡再開発の目玉となるか好立地パチンコホール(後)

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九大学研都市駅周辺略地図
九大学研都市駅周辺略地図
Map data (c) OpenStreetMap contributors, CC-BY-SA

 福岡市西区北原、JR九大学研都市駅周辺にもホールは多い。同駅から徒歩5分圏内の好立地で営業しているのが「スーパーDステーション伊都店」(旧・P-ZONE伊都店)。そこから国道202号方面へ進むと見えてくるのが、お好み焼きも人気の地域密着型ホール「パーラーひまわり」だ。そして、両ホールと距離的にも近く、国道202号バイパスから九大までを結ぶ学園通線沿いで営業しているのが「メガフェイス伊都店」だ。このエリアで最も集客力のあるホールで、すぐ側では北原・田尻土地区画整理事業も進行中。

 また、近接地では「ファンファクトリー栄周船寺」(21年11月閉店、土地面積約273坪)の解体工事が進んでおり、跡地の動向が注目されている。

ファンファクトリー栄周船寺-跡地
ファンファクトリー栄周船寺 跡地

規制強化にコロナ禍が連鎖

 苦境に立たされるホール運営企業の心情などどこ吹く風で、にわかに盛り上がりを見せるホール閉店後を見据えた不動産争奪戦。ここまでパチンコ業界が追い込まれるきっかけになったのは、やはり18年2月の改正風営法施行にともなう出玉規制ではないだろうか。

 パチンコの1回の大当たりで得られる出玉の上限が2,400個から1,500個に、パチスロは同300枚以上から300枚までに減少。改正風営法に対応すべく、パチスロ開発メーカーで組織される回胴式遊技機製造業者連絡会では、自主規制として、いわゆる「2,400枚規制」を盛り込んだ。規制強化に対応した新基準機と、規制強化前からホールで稼働していた旧基準機との入替えには期限が設けられたため、真綿で首を締めるように、遊技の選択肢も狭められていった。これが、遊技ファンをホールから遠ざけた一因だ。要はパチンコもパチスロも(とくにパチスロは)勝ちづらくなってしまったのだ。

 ホール自体にも変化があった。20年4月に施行された改正健康増進法にともなう、屋内原則禁煙だ。ホール内においては電子タバコが吸えるエリアを整備するか、喫煙室を設置するかのどちらかの対応が求められた。業界トップのマルハンは、分煙ブース1つあたり約300万円の設置費用をかけたほか、ダイナムは対策費として約10億円を投じるなど、運営ホール数が多い企業ほど費用負担が重くのしかかった。ホールの外に喫煙所(スタンド灰皿など)を設けることで対応した中小企業もあったぐらいだ。

 規制強化で遊技ファンも離れていく悪循環のなか、2つの法改正によって新基準機の購入や分煙環境整備と費用先行が続いたホールに、追い打ちをかけたのがコロナ禍だった。情報が錯綜する初期状態において、人が密集しているというイメージだけで槍玉に挙げられたのだ。まるで感染拡大の温床のように、連日メディアや個人のSNS上で取り沙汰され、稼働に貢献していた高齢の遊技ファンはホールから離れていってしまった(後になって世間のイメージとは逆に、ホールの換気能力の高さが注目されることになる)。

 さらに、パチンコ・スロット台に必要な半導体の供給が滞ったことで、ホールは誘客手段である新台入替が思うようにできない事態に陥った。

 「人員不足に加え、半導体不足による遊技機および周辺機器の供給が滞るなか、上海ロックダウンも重なり、設備全般の確保が困難になっています。さらに、今後スマートパチンコ(※)や新紙幣への対応など、大がかりな設備改修も待ち受けています。取捨選択として、稼働の悪いホールを閉店させ、閉店ホールの人員、稼働の高い遊技機および設備を旗艦店へ補充して優位性(収益性)を保つ動きが顕著になってきています」(ホールB社員)。

 規制強化から間断なく訪れたコロナ禍によって、埋没費用が増加。損切りするホールが増えているのは、間違いなさそうだ。

※スマートパチンコ:ユーザーが実際にパチンコ玉に触れずに遊技ができる機種。ホール側にはスタッフの作業負担減、それにともなう人件費削減や出玉データの一元管理などのメリットが見込まれる。

【代 源太朗】

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