2024年03月19日( 火 )

福岡大学の暗い末路

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作家 金堀 豊

 NETIB-NEWSに「福岡大学の変貌」を載せてもらったのは梅雨の始まる頃だったから、もう1カ月半くらい前だ。その後、同サイトには続々と「徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史」なる連載が載った。これを読むにつけ、私の懸念していた福大の変貌ぶりが本当であったどころか、予想以上にひどいものだとわかった。朔学長は福大の病が末期症状を呈していることを体現している。

 このような状況になると、もはや打つ手がない。朔学長の犠牲になってきたであろう現場の人々は、今さら何の抵抗もできないであろう。では、朔氏は学長に再選され、九州一のマンモス大学を思いのままに動かし、福大を日大のようにしてしまうのだろうか。

    福大の規定では学長に対する権限があるのは大学協議会と理事会だそうだ。大学協議会は大学における最高審議機関とされ、理事会は外部の者も加わった外からの監視機関とされている。では、大学協議会が現体制に逆らって学長を告発するようなことをするかといえば、そうはならないだろう。NETIB-NEWSに暴露記事がいくら出ようが、気にせぬふりで現体制を維持しようとするだろう。一方の理事会であるが、監視機関というより、事を起こしたくないがためにすべてを承認する「事なかれ」機関といってよい。朔体制が揺らぐことはなさそうだ。

 揺らぐ可能性があるとすれば、文科省からの補助金削減を含む制裁である。文科省には過去に福大医学部の入試に関する不正を摘発した実績がある。福大の現状を調査し、制裁に至る可能性は皆無とはいえないのだ。

 文科省が摘発した不正とは、福大医学部が2018年の入試において女子や浪人期間の長い受験生に不利な扱いをしたというものである。文科省はほかにも8つの大学の医学部における同様の不正を公表し、速やかな是正を求めた。それら8大学はこれを受けて、本来なら合格であった受験生を追加入学させることにした。ところが福大だけは「格別」の措置をとるとして、ついに追加入学措置をとらなかったのである。そのときの医学部の最高責任者、すなわち医学部長が、現学長・朔啓二郎氏であった。

 不正のあった翌7月、西日本新聞に以下のような記事が載った。文科省が不適切と認定した昨年の福岡大学医学部の入試で、3浪の長女が不合格となった男性(56)から「福大の対応には納得できない」との声が寄せられたというのである。不適切入試とされた9大学の医学部のうち、追加合格の措置をとらなかったのは福大だけであり、現役生を優遇する得点調整があったかどうかも明らかにされていないと記事は述べている。西日本新聞といえば福岡を中心に広く購読者をもつ地方の大新聞社であるから、この記事のインパクトはあったはずだ。

 ところが、そこに載せられた記事の1つや2つ、福大、とくに医学部にとってはどこ吹く風であったにちがいない。今年になってNETIB-NEWSが、学長になった朔敬二郎氏の裏面を暴いた記事を毎日のように載せたにもかかわらず、そんなものは無視してかかるのが得策と朔氏以下心得ているのである。

 それもそのはず、福大執行部は学内の多くの教職員が現体制に不満や疑念を抱いていることは百も承知だ。それでも「蛮勇」で敢行すればすべての議案が通ってしまうと帝国陸軍並みに考えているのだ。彼らにとって唯一恐るべき存在は文科省であるが、その文科省、どこまでこの問題を本気で調査するだろうか。仮にしたとしても、最終的には「私学である福岡大学が自分で解決しなくてはならない問題」と結論するにちがいない。

 セクハラやパワハラなどの不祥事が生じた場合、大学は当事者に懲戒処分を下すことがある。しかし、学長自身の不正行為を調査する委員会が立ち上がるはずもなく、まして懲戒処分が下るはずがない。それもそのはず、問題の責任は朔敬二郎氏個人にあるのではなく、福岡大学全体にあるからだ。

 はっきり言って、朔学長が善人であろうと悪人であろうと、福大というシステムの動脈硬化を象徴する存在に過ぎない。NETIB-NEWSは朔学長の裏面史を取り上げたが、問題は彼1人にあるのではなく、そういう学長を頂点に戴くシステム全体にあるのである。すでに公表した連載「福岡大学の変貌」(連載(5))において、私は以下のように述べた。福大が「システムが機能するにはフィードバックが機能し、自己修正能力をもつことが必要だ」と。ところが現状を見ると、その動脈硬化はますますひどくなって末期症状を呈している。現在の福大には自己救済能力がなくなっているのである。

 福大という末期状態にある大学を象徴するのが朔啓二郎学長である。彼の体制は今後も続き、それとともに福大のシステムは機能不全に陥るであろう。それはおそらく財政破綻として露呈するのではないか。そのときになって内部の者が改革の必要性を痛感しても、時すでに遅しというほかない。

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