2024年04月24日( 水 )

西日本タクシーの再編とオーナー一族のこれから(中)

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福岡の業界の草分け的な存在

syaoku 西日本自動車(株)は50年7月に、前述の吉左衛門氏により設立された、福岡におけるタクシー業界の草分け的な存在である。『西日本タクシー』の名称で営業拠点を本社(中央区那の津)、那珂川町、糸島市内の計3カ所に置き、営業地区を福岡都市圏とその周辺としている。車輌は計132台を保有し、うち小型タクシーが119台。ジャンボタクシーや福祉寝台車輌などの特殊車輌も保有している。九州一円および中国地方への観光名所をめぐる観光タクシーや、福岡地区のゴルフ場への送迎を行っている。
 また、介護事業を立ち上げ、介護福祉士、ホームヘルパーの資格を持ったドライバーが介護サービスを実践するなど幅広い業務を手がけている。このように、単なるタクシー・運輸事業ではなく、より社会性と公共性を高めた事業を推進している同社の姿勢は、井上一族の吉左衛門氏から受け継がれる『人々に尽くす、お世話をする』という志が反映されているものと推察される。

 同社の業績は、近年は11億円台の売上高で推移しているものの、年々減少傾向にある。昨今、経済構造改革によりタクシー業界も規制緩和が進んだことで、新規参入が増加。現況は落ち着きを取り戻しているものの、競合の激しさは続くであろう。今後の同社の業績は、11億円台の売上高を維持しながらも、ジリ貧状態が続くことが予想される。

 一方、今年の5月に一部報道で、「西日本自動車のタクシー事業が、同業他社に7月に譲渡される」と報じられた。譲渡先として、同業の日新交通(株)の名前が出ていた。日新交通側に取材したところ、「当社として、その話のコメントは差し控えさせていただく。どの報道機関にもその姿勢で通している」と述べた。
 このような報道が出たことで、同社のマネジメントが揺らいできているという。
 「現況、待遇が良いとは言い難いタクシードライバー。業界平均で約21~25万円の月収だ。西日本自動車においても同様で、なおかつ賞与額に関して不平不満が同社の従業員のなかで大きくなっているようだ。重労働のうえに待遇が減る、会社がどうなるのか不透明であるなら、モチベーションも下がるだろう」(業界関係者)と、同社内の士気低下を述べている。

(つづく)
【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 博行
所在地:福岡市中央区那の津5-4-3
設 立:1950年7月
資本金:1,000万円
売上高:(14/3)11億4,000万円
TEL:092-761-7150

 
(前)
(後)

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