2024年04月24日( 水 )

西日本タクシーの再編とオーナー一族のこれから(後)

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法人分割の申請の実施

fukuoka こうした報道に対して西日本自動車は、明言を避けている。冒頭記した通り、九州運輸局へ法人分割の申請を出している。内容は、分割法人・被分割法人とも西日本自動車になっている。申請許可の種類は、一般乗用旅客自動車運送事業たる法人の分割(新設分割)とし、営業区域は福岡交通圏、福岡県(患者輸送限定)。車輌数を特大7、大型3、普通119、特種(寝台)3としている。これら車輌数は、同社のタクシー保有数132である。九州運輸局によると、「申請は認可された」としている。現時点(6月23日)で同社の法人登記簿に変更はない。今後、法人名もしくは本社所在地を変更し、新たな法人として運営される。
 法人分割は事業譲渡とは異なり、金銭の授受の発生は行われなくても株式の発行によって実現可能である(金銭でも良い)。今後の同社の動きについては明らかではないが、事業の再編が近日中に行われることは、ほぼ間違いないだろう。

 参考までに、同社の不動産保有について記しておく。本社および営業所はグループ会社の九州産業不動産(株)の名義で、担保設定の債務者について本社は西日本自動車、営業所は同じくグループ会社の(有)福岡市自動車学校となっている。限度額の合計は、4億4,000万円。井上家の自宅(中洲1丁目)は、福岡市自動車名義で担保設定の債務者も同様で、限度額は8,800万円となっている。西日本自動車および同グループと井上家の明らかになっている保有不動産による限度額合計は、5億2,800万円。
 保有する資産における含みの益は、今後期待薄の感が強い。なぜなら資金調達力が限界に達していると見られ、新たに設備投資して事業を活性化させる力は、残っていないと推察されるからだ。また同社の企業価値の査定も厳しいことから、新設分割の手法によってタクシー事業の再編を試みているのであろう。

注目される井上代議士、県議の動向

 吉左衛門氏より脈々と受け継がれてきた『人々に尽くす、お世話をする』という志で、今日まで事業と政治活動にまい進し、活躍する井上一族。その井上一族の事業の中核であるタクシー事業の行く末と、そのタクシー事業の展開により、今後の貴博代議士と博行県議の政治活動への影響はどうなるのか――。

 角度を変えた見方をすると、同社のタクシー事業が減少傾向になるなか、貴博氏は県議会議員から衆議院議員へ転身。その兄の後を受けて、晴れて県議会議員に当選した博行氏。井上一族の中核であり、老舗のタクシー事業である西日本自動車が苦境のなか、貴博・博行両氏の個人的な立場では、“大変良い時期”に国政と県政に参画できたということである。さらにタクシー事業を再編・再構築できれば、貴博・博行両氏の肩の荷が降り、政治の世界だけに集中できる。それが本音であろう。
 それでもきれいごとを抜きにして、井上一族の使命である『地域の人々のため尽くす、お世話する』ための働きには、相応の稼ぎと金銭は必要であることは明白である。タクシー事業を自らの財産を投じて再建させるのか、それとも経営の一線から退き身軽になるのか―。博多の“名士”として今後も地域の振興に尽力できるのか、井上一族は岐路に立っている。

(了)
【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 博行
所在地:福岡市中央区那の津5-4-3
設 立:1950年7月
資本金:1,000万円
売上高:(14/3)11億4,000万円
TEL:092-761-7150

 
(中)

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