2024年03月29日( 金 )

【井上議員1,300万円疑惑】オンブズマン共同代表・上脇教授「悪質だ」

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 自民党の井上貴博衆院議員(福岡1区)が2012年衆院選挙で党支部から寄付を受けた選挙資金1,300万円を収支報告書に記載しなかった問題で、公選法違反容疑(虚偽記載)で福岡地検に刑事告発状を送った政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大学教授に話を聞いた。上脇氏らは、猪瀬直樹・元東京都知事の5,000万円の不記載でも、同罪で刑事告発した。猪瀬氏は辞職、罰金50万円の略式命令、公民権停止になった。

「悪質な事件」かつ「悪質な人物」

上脇博之・神戸学院大学法学部教授<

上脇博之・神戸学院大学法学部教授

「訂正して終わり」では済まない。井上議員は説明責任を果たしておらず、事務所に隠ぺい説明をさせている。また、井上氏は、作家の百田尚樹氏を呼んだ自民党勉強会で「スポンサーにならないことが一番(マスコミは)こたえる」と発言した。これは「安倍総理を支えるためであれば、手段を問わない。なんでも許される」かのような発言で、安倍首相を応援する与党国会議員の奢りだ。悪質な事件であると同時に、悪質な人物だ。

 政治資金収支報告書によれば、井上氏が初当選した2012年衆院選挙の投票日6日前の12月10日、井上氏が代表を務める自由民主党福岡県第1選挙区支部が、自民党本部から1,300万円(原資は政党交付金)の交付金の交付を受け、同支部が同日、「選挙関係費」として井上氏に同額を寄附金として支出した。
 井上議員側の説明では当初、「(1,300万円を)通帳に残して管理してきた」と述べていた(ニュースサイト「HUNTER」7月2日付)が、その後のマスコミ報道では、「当初は自己資金でまかなう予定だった約765万円を選挙運動費用として使い、残る約535万円を金庫に保管。約535万円を7月3日、党支部に寄付(返金)した」と変転した。

 猪瀬氏が5,000万円を公表できない裏金としていた事件と限りなく同じ構図だ。
 当初の「1,300万円を通帳管理」が事実なら、井上議員が代表を務める政党支部から選挙資金として寄付を受けながら、井上議員個人の懐に入れていたことになる。説明が変わったのは、当初の説明では猪瀬氏と同じ犯罪になり刑事責任を受けると恐れたからだと思う。
 もし、選挙運動に使ったのであれば、支出の記載がない選挙の裏金として使ったことになる。いずれにしろ悪質だ。

訂正ではつじつま合わない

 井上議員側は、選挙運動収支報告書は7月3日付で訂正し、収入として、党支部から1,300円の寄付を記載した。しかし、支出は一切訂正がなく、1,300万円が丸々残った形になっている。

 約765万円を選挙運動費用に支出したとマスコミに説明しながら、支出は追加の訂正がなされていない。また、自己資金765万円の立て替えだったと言いながら、訂正でも自己資金はそのまま収入として記載されたままだ。説明と訂正のつじつまが合っていない。

出納責任者のミス、訂正では済まない

 党支部から選挙関係費として「寄付」された1,300万円につき、井上氏の選挙運動費用収支報告書を訂正して収入に加えた。これは、当初の不記載が虚偽だったことを「自白」したことになる。井上氏が受け取る段階で1,300万円の入金を承知していれば、そのカネが支出されている場合、それを把握していたことになる。2014年には衆院選挙があり、その時に約535万円もお金が金庫に残っていれば12年選挙の収支が合っていないことに気付いたはずだ。「出納責任者の単純ミス」「議員は知らなかった」は通用しない。責任は、出納責任者だけでなく、議員本人にもある。検察は、厳正に捜査し、厳重に処罰すべきだ。
 選挙運動として何に使ったか、井上議員は説明すべきだ。収支報告に記載しなかったのは、最初から個人の懐に入れるつもりだったか、裏金として使われたかの、いずれかだろう。説明すべき本人は、直接、国民の前で説明せず逃げ回っている。真実を説明しないなら、議員失格。辞職すべきである。

【聞き手・文:山本 弘之】

 

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