2024年04月24日( 水 )

長崎温泉 やすらぎ伊王島、地域に身近なリゾートへ

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(株)KPG HOTEL&RESORT

地元客の利便性向上を追求

長崎温泉 やすらぎ伊王島<

長崎温泉 やすらぎ伊王島

 世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」。その構成資産に端島炭鉱(軍艦島)、高島炭鉱が含まれていることで、長崎市の旧産炭地域に活性化のチャンスが訪れようとしている。そのなかの1つが、かつて端島、高島と同じ炭鉱の島であった伊王島。1960年代の最盛期には、1,748世帯7,300人が暮らしていたが、閉山とともに人口が激減。15年6月末現在、489世帯767人と、人口では最盛期の約10分の1となっている。

 かつて、リゾート地としての地域振興が図られ、一時、脚光を浴びたが、バブル崩壊とその後の景気低迷で高級リゾートそのものが受けなくなって破綻。2005年1月に伊王島町は長崎市に編入され、13年3月には伊王島大橋が開通。そして現在、日帰りで旅行気分が味わえる島として、地元・長崎市民を中心に人の往来が増えてきている。そして、その伊王島観光の中心的存在が、(株)KPG HOTEL&RESORTが運営する「長崎温泉 やすらぎ伊王島」だ。

 同社は、03年7月から、かつての高級リゾート施設の運営を任された。今年1月から陣頭指揮をとる5代目総支配人・町田喜代文(まちだ きよふみ)氏は、歴代初の長崎市出身者。地元・長崎市への想いは強く、より地域に身近な存在を目指し、地元客の利便性向上に努めている。「まず、県ナンバー1を目指し、ホスピタリティ(おもてなし)を発揮する人材の育成。そして、無料送迎バスの路線の拡充を図るなど、長崎の方々に向けたサービスの充実を図っています」(町田総支配人)。今年3月から、送迎バスが中央橋付近を経由するようになったほか、白木団地方面を往復するようになった。また、近隣住民への恩返しとして、温浴施設が低料金で利用できる「町民割引」(香焼町、深堀町)も行っている。

国際会議の舞台となる伊王島

島風の湯の家族風呂の大型ソファ<

島風の湯の家族風呂の大型ソファ

 昨年7月に同社が自前でオープンした、天然温泉が楽しめる「長崎伊王島 島風の湯」では、長崎の海を一望できる露天風呂で沈む夕日を眺めながら、天然の塩化物泉で1日の疲れを癒すことができる。一方、露天風呂とサウナを備えた家族風呂を10部屋設置。容体の急変が懸念される高齢者や障がい者の利用も考えて、急に倒れてもいいように大きなソファが設置された部屋もある。こうした幅広い客層の利用を考えた地域密着路線の効果により、昨年は13万8,000人が伊王島の同社運営施設を利用。内訳は宿泊客9万3,000人、日帰り客4万5,000人。その6割が長崎からの集客。今年もさらなる集客増が見込まれている。

 今年11月、核兵器と戦争の廃絶を目指し、各国の科学者が集うパグウォッシュ会議世界大会が伊王島で開催される。陸路が橋一本に限定される伊王島の特性は、人の出入りがチェックしやすいという警備上の利点を生む。一方、(株)軍艦島コンシェルジュと提携し、端島炭鉱(軍艦島)の見学ツアーにも宿泊客が伊王島から参加可能(要予約)。今夏公開予定の映画「進撃の巨人」の撮影関係者がロケ期間中滞在したことにちなみ、公開に合わせた同映画とのタイアップ企画も予定されている。地域のニーズを土台として高めたポテンシャルが、様々な面で発揮されようとしている。

【山下 康太】

▼公式サイト(各種料金・サービスの詳細はこちら)
・長崎温泉 やすらぎ伊王島
・長崎伊王島 島風の湯

 

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