2024年04月25日( 木 )

耐震不足マンション訴訟、新局面!(3)~当時の計算プログラム

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 「無能力確認検査機関」

 一級建築士からは、久留米市の確認検査能力に疑問符をつけ、「無能力確認検査機関」と批判する声がある。

 「新生マンション花畑西」の設計図書では地盤を「2種」と明記しているにもかかわらず、構造設計では「1種」地盤の係数で計算されていることが明記されている。指摘をされれば、素人でも簡単に偽装カ所が見抜ける。その偽装の結果、本来の地震力の78%しか見込んでいないため、その分、耐震強度が小さくなっていると住民側は指摘する。

 住民側専門家の仲盛昭二氏(構造設計一級建築士)は、建築確認通知書の図面では、鉄骨柱と梁が約16センチ離れており緊結されていないのに、構造計算書では、緊結された構造モデルを採用していると指摘する。「緊結されていないこと自体が、工学的にも法的にも不適切。図面と異なった構造モデルを採用した偽装を見抜けなかったとしたら、建築確認審査能力がなかったと言わざるを得ない。建築確認審査機関などに問い合わせたところ、『鉄骨柱と梁が接合されていない、この架構は、建築確認を通す事は、技術的に難しい』と回答している」。

 これまで久留米市は、こうした具体的な指摘に対し、まったく反論してこなかった。
 建築基準法が要求する安全性を満たしているのか、耐震強度が基準の何%あるのか、構造再計算の結果を検証せずに、市は「マンション建設当時、建築確認は適切に行われていたものと認識している」としている。
 仲盛氏は、「久留米市長は、適切に建築確認が行われていた理由を、法的・技術的根拠に基づいて、回答すべきです。それができなければ、久留米市の建築確認は全て、過去、現在を問わず、本件マンションと同じくデタラメであったことを公言しているということです」と批判する。

住民側が地盤を偽装したと示す資料 住民側が地盤を偽装したと示す資料

久留米市「当時のSS1で再計算せよ」
 久留米市が法的・技術的検証に入らないための「入り口論争」は、まだある。
 「建築確認当時の耐震基準に適合していれば、新しい耐震基準は適用されないので、法改正後の新しい耐震基準を満たしていなくても違反にならない。建築確認の欠陥を論ずるのであれば、建築確認当時の構造計算プログラム(SS1)を用いて強度を計算すべきだ」と言うのである。

SS1を仲盛氏所有!すでに耐震不足証明済み
 しかし、訴訟前に住民側は久留米市の依頼に応じて、当時の構造計算プログラム(SS1・US2)を用いた構造再計算結果を提出し、耐震強度の不足を示している。今回の裁判でも、証拠として提出することを明らかにした。
 すでに久留米市は提出を受けて持っているにもかかわらず、検証を放棄してきたが、当時の構造計算プログラムは、ソフトと専用ハードが一体となったもので、現在、SS1のソフト・ハード一式を稼働状態で保管しているのは全国でも極めて異例だ。もはや、SS1そのものが「博物館」入りする代物で、存在しなければ、再計算することはできない。
 久留米市がしきりに当時の構造計算プログラムによる再計算を求めたのには、そんな思惑があったのかもしれない。
 だが、今回、仲盛氏が所有していたため、構造検証が可能だった。

 久留米市は次回口頭弁論前の10月13日までに、反論をまとめる予定だ。内容が注目される。

鉄骨柱と梁が緊結されていないことの再現図(仲盛昭二氏ら作成) 鉄骨柱と梁が緊結されていないことの再現図(仲盛昭二氏ら作成)

久留米市に住民側から提出されたSS1による計算結果(情報公開で入手したもの) 久留米市に住民側から提出されたSS1による計算結果(情報公開で入手したもの)

(つづく)
【山本 弘之】

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