2024年04月20日( 土 )

アマゾンの野望をどう受け止めるか!!(もう真似ることが不可能という諦観)

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 日本の流通関係者はアメリカに渡り、流通視察を行い、学んでビジネスモデルを組み立ててきた。ダイエー・中内功オーナーを始めとして1950年代の終わりから60年前半にアメリカ詣でに精力を使ってきた。その努力の成果があってスーパーチェーンの勃興・繁栄の時代を迎えた。

 そして今でもアメリカは流通の最前線を走っている。(1)店舗無人化、(2)配送、がキーワードになっている。その最先端の役をアマゾンが担っている。

 今年になってシアトルで「アマゾン・ゴー」というコンビニエンストアをオープンした。まったくの無人化店舗である。客は店を出るときにレジを通す必要がない。店舗を出る際に顔認識がなされて清算手続きがされるという。九州からも流通関係者たちがこぞって視察に押しかけている。ところが様相が大きく変わってしまった。視察者の1人に聞いた。「ウーム、凄い!!」とコメントを発したが、次の言葉が続かないのだ。

 要約するとこうなる。(1)未来というか近未来(今すぐ)の無人化店舗づくりを目の当たりにして立ち竦んでしまった。「こんな店でしか今後、太刀打ちできないのか!!」と愕然とした。(2)納得はしたが、「こんな店を実現させる金がない、投資することは不可能だ」とあきらめが先に走った。アマゾン店舗視察団は結局のところギブアップしてしまった。アマゾンの野望に粉砕されてしまったのである。

226億ドルの開発投資の威力

 アマゾンの業績発表の中で驚いた数字を発見した。前期比で開発投資額が40%以上伸びて226億ドル(約2兆4,000億円)に達しているのだ。この膨大な資金を背景に上記した無人店舗の運用を筆頭に、ドローンを使った配達サービス、物流倉庫の人手ゼロの自動運営、ロボットによるトラック輸送の実現に挑戦している。これらが現実に稼働するのは10年先ではない。5年以内には達成できるものが多い。

 アマゾンの野望には『共生・共存』という言葉はない。ただひたすら『生活者の利便さ追求』の為には手段を選ばないという主義が顕著になってきている。コスト削減には『労働者ゼロ』も厭わない。同業者の存在も認めないのだ。「恐らくあらゆる分野で特許申請をしてがんじがらめにして擬似店を送りだす余地がなくなるであろう」とある流通経営者が予測する。

 現在、生活者は利便さの恩恵を受ける為に対価をケチることはない。プライム会費の値上げにも承知した。運送コストアップにも同意したのである。「待てよ!!」と一度、立ち止まって思考していただきたい。生活者が充実した生活をするにはそれなりの収入が必要だ。稼がないと優雅な生活の維持を断念することになる。生活者の顔は一面ではない。お金を稼ぐという顔も持っている。

 「労働者の場を撲滅させる」のがアマゾンの基本戦略である。人の手を借りる職場を失くす経営戦略は「本当に生活者の味方になるのか?」という命題に真剣に向かい合ってもらいたいものだ。

 

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