2024年04月19日( 金 )

先端ロボット技術による「ユニバーサル未来社会」の実現!(前)

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千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田 貴之 氏

 日本政府は1月23日に、「ロボット新戦略」を発表した。それによると、ロボット革命とは、(1)センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでロボット化(たとえば、自動車、家電、携帯電話や住居までがロボットとなる)し、(2)製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、(3)社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現するとしている。そして今、この動きが東京オリンピック・パラリンピックの2020年に向けて加速している。その渦中にいる、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長、古田貴之氏に聞いた。

具体的な目標実現に向けて始動

 ――1月に政府が発表した「ロボット新戦略」の動きが、2020年に向けて加速していると聞きます。先生はその渦中におられると思いますが、今、どのような点が重要と考えられていますか。

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田 貴之 氏<

千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター
所長 古田 貴之 氏

 古田 私はここのところ、一貫してロボット技術を使って、日本が世界に先駆けて迎える「少子高齢化社会」をどう乗り切っていくべきかを考えています。
 そのなかでも、昨年は乗物、パーソナルモビリティに着目し、開発にも携わりました。しかし、これはほんの一例で、究極的には、老若男女、年齢、国籍も乗り越え、障害がある人もない人も等しく活き活きと生活ができる「ユニバーサル未来社会」を、ロボット技術で実現していくことが重要と考えています。

 少し、旬なお話をしましょう。日本政府は1月23日に「ロボット新戦略」を発表して話題になりましたが、それはすでに古いものになっています。別の言い方をすれば、1月の「ロボット新戦略」は総論、目標レベルのものだったのですが、現在では各論に落とし込まれ、具体的な実現に向けて動き始めています。6月30日には、『日本再興戦略改訂 2015』が閣議決定されました。デフレ脱却に向けた動きを確実なものにし、将来に向けた発展の礎を再構築することを目的としており、ここには日本のあらゆる産業や社会の「再興戦略」が載っています。

 そのなかに、『改革プロジェクト2020』というのがあり、2020年までに具体的に推進される6つのプロジェクト【別表】が載っています。
 このうち、プロジェクト3「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」が、これからお話していくことに該当し、この6つのプロジェクトは相互に関係しながら進められていきます。

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社会インフラに先端ロボット技術を実装する

 ――2020年に向けて、かなり具体的な動きがすでに進んでいるのですね。プロジェクト「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」とは、どのような内容になっているのですか。

 古田 私はこのプロジェクトには、当初から参加させていただいています。日本政府は、ここで「日本再興戦略」と「ロボット新戦略」を融合させ、2020年の東京オリンピック・パラリンオリンピックに向けて、イノベーションを加速させ、その成果を海外に向けてアピールすることが重要であると考えています。

 具体例として、台場および青海地域を中心に「ユニバーサル未来社会体験ゾーン」をつくることなどを目標としています。そこには、パーソナルモビリティ、超臨場感映像技術、デジタルサイネージ、多言語翻訳、案内ロボット等の先端ロボット技術の体験フィールドが構築されます。一方、市街地では自律移動型ロボット、各地の空港ではコミュニケーションロボット(翻訳・道案内サービス)、手荷物運搬サポートロボット等が相互に連携してサービスを提供、来日客をお出迎えします。

 社会インフラに先端ロボット技術を実装化させ、あらゆる空間でロボットが活躍します。高齢者や障害者、外国人も含めた多様な人たちが、ストレスフリーとなる生活の実現に必要な幅広いサービスを享受できるシーンをつくり上げるわけです。そして、その模様を世界に発信し、その後の経済成長につなげるインフラにする狙いもあります。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
furuta_pr古田 貴之(ふるた・たかゆき)
工学博士。1968年、東京都生まれ。96年、青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程中途退学後、同大学理工学部機械工学科助手。2000年、博士(工学)取得。同年、(独)科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボットの開発に従事。03年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長。著書「不可能は、可能になる」(PHP研究所)ほか。

 
(中)

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