2024年04月17日( 水 )

税理士の突然の廃業に会計ソフトの落とし穴?(中)

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税理士たちの沈黙

 税理士廃業にともなう顧問契約の解除が発端となっている会計ソフトの使用料問題。廃業に関して顧問先の企業に責任がない以上、顧問契約の解除に関連して、注意すべき事項(会計ソフトについては別途、契約解除が必要など)について然るべき説明があったかどうかが問われるはずだ。だが、廃業の理由については秘密のベールに包まれていた。

 元顧問先の企業を相手に少額裁判を起こした(有)キャリア・スタッフであるが、その代表の穂積氏は税理士時代、顧問先を100社ほど抱えていると言われていた敏腕税理士だった。中小企業家同友会などの交流会によく顔を出すほど社交的。税理士の垣根を越えた活動にも取り組んでいた。2002年3月19日に設立された、弁護士、司法書士、税理士、弁理士など、さまざまな分野の士業13名からなる特定非営利活動法人 起業家支援センターにも参加。同センターのメンバーによると、穂積氏は中心的人物であったという。

 同様に、過去の穂積氏を知る人物の間では、「行動力がある」という評価が共通していた。顧問先企業にも積極的にアドバイスを行っていたとされ、評価は高かった。だからこそ、突然の税理士廃業に、戸惑う顧問先企業も少なくはなかった。ところが、元顧問先の企業や同業の税理士に尋ねても、廃業の真相は見えてこない。会計ソフトに関する契約について、当時、適切な対応がとれない状況だったかどうかについてはわからないのだ。

 2014年4月、穂積氏が、顧問先や関係先に出した業務廃止、事務所閉鎖を告げる文書には、「一身上の都合」とされていた。一方、穂積氏の税理士業務を承継したとされる篠原税理士事務所を取材したところ、応対した男性スタッフは「健康上の理由」とコメント。しかし一方で、同業の税理士たちは、この高名な敏腕税理士の廃業について「知らない」とかぶりを振る者が大半を占める。「健康上の理由」なら知っている税理士仲間がいてもおかしくはないはずだ。

 穂積氏本人にも、まず、キャリア・スタッフの事業内容について電話で取材を依頼したが、同氏は多忙を理由に拒否。税理士廃業の理由を質問したが、「関係ないでしょ!あなたに!」と声を荒げ、激しい音を立てて電話通信が遮断された。よほど尋常ではない理由だったのか。そのようななか、ある税理士(以下、Y氏)が、一度は真相を知っていると答えたものの、その内容については回答を拒否。ただし、「健康上の理由ではない」と否定した。Y氏は、「穂積氏の廃業は福岡市の税理士の間で話題になり、真相を知っている人は少なくはないはず」と語った。

(つづく)

【山下 康太】

 
(前)
(後)

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