2024年03月29日( 金 )

ハイパーインフレが待つ日本の未来(後)

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fujimaki_pr参議院議員 藤巻 健史 氏

使う方にばかりに気を配る政治家

 ――政治家の資質にも原因があろうと思います。


参議院議員 藤巻 健史 氏


 藤巻 地方議員から国政に転向した方で、首長を経験した方なら、収入と支出を考えますが、それ以外の方は基本的に支出、つまり歳出しか考えていないように感じます。何かあるとどんどん法案を増やして、それに予算をつけていく。すると結果、収支のバランスが悪化していく一方になります。本当に必要な法案もたくさんあるのですが、なかにはアピールのための法案も混じっているんですよね。
 たとえば、病気の治療とか環境保全とか進学に関しての法案が提出されたとします。それらで苦しむ人の役に立つということになれば、反対はしづらくなります。そして法案が通り、予算がつきます。歳出の方ばかりが厚くなっていくのですよね。
 これが、もし、国民に危機感があれば、その思想の根底に何かを増やすのなら何かを減らさなくてはいけないという考え方があれば、何でもかんでも法律を通すということはなくなります。国といえども金がなければ何もできないからです。その感覚が、政治家にも国民にもないのです。そして、法案に反対すると非人道的だと批判にさらされます。すると、どんどん借金が膨らんでしまうのです。


 ――現時点で、アベノミクスは成功しているとお考えでしょうか。


 藤巻 私はそうは思いません。量的緩和をすれば、誰でも今のような状況を生み出すことはできます。ただ、先ほどから申し上げている通り、そのつけはまわってきます。それがわかっているから、誰もやってこなかったのです。歴史的に見れば、安倍首相は日本を破綻に追いやったという評価を受けると思いますね。じり貧を脱するために、どか貧にしてしまった、と。日銀の量的緩和も、いつまでも続けるわけにはいかないでしょう。それが終わるとき、日本はどうなるかをもっと考えなくてはいけません。


 ――黒田総裁の目つき顔つきを見て、いつその波が来るかを読まなくてはいけませんね。


 藤巻 日銀は従来、日本の知性だったはずです。宴会で「宴もたけなわですがそろそろお開きに」というような役割を担ってきたと思います。それが今では率先してお酒を注ぎまくっている状態です。これは役割の放棄だと思います。もし、黒田総裁が財政ファイナンスをやろうとしていたとしても、部下がいさめなくてはいけません。白川方明前総裁は反対をしていました。白川前総裁は今、何をお感じになられているのか、ぜひうかがってみたいですね。

世界の警察にはまだ早い

 ――アベノミクスが一見、成功しているように見えることが安倍政権の支えになっています。それゆえに安保関連法案にまで手をつけてしまっているように感じます。


 藤巻 私は少し勇み足かなと感じています。やはり、中国の軍拡、朝鮮半島の核問題などがあり、このままでは日本を守っていけるかわからない、という危機感が原点にあるとは思います。今までの安保法案の不備は直ちに直さなくてはいけないという点は賛成です。早急に、です。そうしないと日米のチームワークで成り立っている日本の防衛が成り立ちません。日本を防衛している米国艦隊が攻撃を受けても自衛隊が指をくわえてみていなくてはいけない今までの安保法制はまずかったのです。自分を守っている人が殴られているのに「僕、知らないよ」では、もう信頼関係は喪失します。
 もちろん日米安保体制がなくても、日本の防衛は大丈夫だという話なら別でしょうけど。
 そうは言いながら、世界の警察にまでなっていこうという政府案は、行き過ぎだと思います。そこまで行くのなら、憲法を改正してからでしょう。まずは自国の経済をしっかりと固めないといけないですね。

 ――最後に、藤巻さんご自身の資産についてお話いただけないでしょうか。

 藤巻 (笑)。先ほどから申し上げているように、円は価値をなくしてしまう可能性があります。1万円札が無価値になる日も来るかもしれません。したがって、私は資産の多くを外貨と不動産で保有しています。万が一の時、それが予測できる場合は、できるだけリスクを減らしておかなくてはいけないですから。


 ――ハイパーインフレが起こりかねない状況にあるということが、大変よくわかりました。本日はご多忙のなか、ありがとうございました。

(了)
【文・構成:柳 茂嘉】


<プロフィール>
藤巻 健史(ふじまき・たけし)
1950年6月3日、東京都に生まれる。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入社。トップセールスマンとして活躍し、社費でアメリカ・ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院に留学、修了しMBAを取得する。帰国後、ロンドン支店勤務を経て、退社。モルガン銀行に勤める。東京支店長を経たのち独立。フジマキ・ジャパンを設立した。著名投資家のジョージ・ソロス氏の投資アドバイザーなどを務める。2013年、参議院議員選挙に出馬、当選を果たす。

 

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