2024年04月19日( 金 )

2016年は電力新時代の幕開け(1)

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コスト高の火力発電所<

コスト高の火力発電所

 2015年は16年の、いや、それ以上に長い、これから将来の長きにわたる電力に関する制度の下地が示された年だったといえよう。かつて、発電時に二酸化炭素をほとんど発生させない発電方法として注目され、主力にまで持ち上げられようとしていた原子力発電は、2011年の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原発事故により再考を余儀なくされた。12年5月には国内にあるすべての原発が運転停止となり、原発の是非が国民的な議論を巻き起こすこととなった。原発の問題点、再生可能な循環型社会の構築への道筋。それらが官民を問わず、さまざまに議論され、これから日本が採るべきエネルギーのあり方が模索され続けていった。

 12年には再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入され、以後、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーによる発電装置の爆発的な普及につながっていくこととなる。一方で、原発は止まり続け、原発による発電比率が高かった九州電力(以下、九電)、関西電力(以下、関電)は老朽化した火力発電所をフル稼働することを強いられ、コストパフォーマンスの悪い発電方法の採用により内部留保を削ることを余儀なくされていく。

 九電の当期利益は12年3月期▲1,749億円、13年3月期▲3,380億円、14年3月期▲909億円、15年3月期▲1,190億円と、赤字を連ねていくこととなる。11年3月期には9,675億円あった九電の自己資本は15年3月期には3,222億円にまで減少してしまった。

 安全・準国産エネルギーと言われた原発に頼ってきたがゆえに、いったんその安全性に疑問符が付いて、運転停止をしなくてはならない状況に陥ってしまった場合には経営的な危機を迎えることになってしまったのである。
 まさに米びつの底が見えている状態になった九電だったが、15年、ようやく光明が差すこととなった。原発の再稼働である。

(つづく)
【柳 茂嘉】

 
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