2024年04月19日( 金 )

【検証】九州地銀18行の第3四半期決算(3)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

fukuoka_tosikou 昨年10月1日に実施された国勢調査の速報値で、福岡市の人口は前回の2010年調査から7万4,767人増(+5.1%)の153万8,510人。20ある政令指定都市のうち、前回調査では7位福岡市、6位京都市、5位神戸市だったが、今回神戸市(153万7,860人)をわずかではあるが抜いて、5位に躍進している。
 九州では、福岡市に「ヒト・モノ・カネ」が一局集中しており、一人勝ちの様相を呈している。因みに1位横浜市(371万8,942人)、2位大阪市(269万5,983人)、3位名古屋市(228万4,284人)、4位札幌市(194万8,383人)となっている。

 日銀の「マイナス金利」導入は、金融機関に貸出金を増やせというサインといえる。企業の設備投資や賃上げを促すことを目的としているものの、地方銀行にとっては、もはや新たな資金需要を掘り起こす術はなくなっているのが実情だ。

2.貸出金残高について

<表から見えるもの>
◆第1位は福岡銀行の8兆1,128億円(前期比+3,495億円)。第2位は西日本シティ銀行の6兆3, 665億円(前期比+2,079億円)。金額および伸び率でも福岡銀行が圧倒しているのがわかる。

◆上位地銀(9行)の預貸率
・80%を超えているのは、福岡市に本店を構える福岡銀行(83.9%)と西日本シティ銀行(82.6%)の二行だけだ。次に預貸率が70%台は、鹿児島銀行の76.3%。宮崎銀行の75.5%。地域経済が縮小していくなかで、この2行が善戦しているのが目立つ。
・預貸率が60%台は、肥後銀行(67.3%)、佐賀銀行(67.2%)、大分銀行(64.9%)、親和銀行(64.4%)の4行。いずれも第一地銀であり、各県の資金需要の限界を表していると言えよう。
・そのなかでも地盤沈下の激しい長崎県には第一地銀が十八銀行(長崎市)と親和銀行(佐世保市)の2行。十八銀行の預貸率は57.8%と九州地銀18行中最下位で、ブービーは親和銀行。今回十八銀行は貸出金残高で、わずか29億円だが親和銀行上回っている。決算の3月末まで残り1カ月。両行の貸出競争は地元企業にとって、金利引き下げ交渉の大きな武器となりそうだ。
 ただ両行が競り合うことは顧客にとっては良いことかもしれないが、その裏では地域経済が縮小するなか、「両雄並び立たず」の諺があるように、今後も両行が生き残っていくには厳しい環境にあることを示しているとも言えるのだ。

◆下位地銀(9行)の預貸率
・山口銀行から分割設立して間がない北九州銀行は、100.4%のオーバーローン。次に長崎銀行は89.5%と高いが、いずれもグループの支援もあり、資金不足になることはないと見られる。
・残り7行のうち、熊本銀行と佐賀共栄銀行が共に(81.3%)。以下豊和銀行(79.0%)、南日本銀行(78.6%)、宮崎太陽銀行(76.4%)、福岡中央銀行(74.5%)、筑邦銀行(64.8%)と続く。

◆下位地銀が上位地銀と比較して預貸率が高いのは、預金ボリュームが小さいために、預貸率を上げないと収益が確保できない構図となっているからだ。その分だけ財務基盤が弱い裏返しで
もあると言えよう。

◆日銀は金融機関に貸出金を増やすよう求めている。しかし地方銀行にとっては「笛吹けど踊ら
ず」の諺のように、人口の高齢化に伴う地域経済の縮小は深刻な状況にある。福岡市以外に本
店を構える地方銀行にとって、これ以上無理して貸出金を増やすことは不良債権の山を築くことを
意味する。

 「マイナス金利」の導入によって、地方銀行の経営は今後一層厳しくなることが予想されており、むしろ九州地銀の金融再編を早めるための口実となりそうだ。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

hyou

 
(2)
(4)

関連記事