2024年04月20日( 土 )

10年来の執念・上場への道~(株)ダックス・平崎守代表の基本戦略

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商工会議所議員会議席上で公言

 (株)ダックスと弊社は、福岡商工会議所第二号議員を委嘱されている。つい最近の議員総会の会議の席上で、偶然にも平崎守代表と隣り合わせになった。同氏の口から、「コダマさん!!いよいよ上場する準備ができました」と洩れてきた。公的な席上での発言であるから、非常に関心を抱いた。平崎代表とは10年の付き合いである。10年前から『必ず上場させてみせる』と公言してきたのは、関係者なら誰でも周知の事実だ。

sora 活況を呈する福岡のマンションデベロッパー界でも、公然と『上場します』と宣言するところは少ない。ダックスが上場を達成すれば、業界への活性化にもつながる。「ぜひ取材に行きます」と面談を求めたが、快諾は示さなかった。後日、電話で再々のアポイントを申し込んで、ようやく取材に漕ぎつけた。事前に業績推移のチェックを行った。別資料参照通りに3期で売上は急伸し、収益にも見劣りはない。「表面では上場基準をクリアできるかも」の感もする。

 平崎氏のコメントは、下記の通りである。(1)上場準備のために、トーマツさんから指導を受けてきた。監査は徹底しており、私の独裁を阻止できる組織運営体制が確立した。(2)16年1月期の決算を踏まえて、3月から上場審査が始まる。上場市場はJASDAQを狙う。9月から11月の間に上場できればと考えている。(3)上場できれば、社員たちも安心して仕事に専念してくれるであろう。これで私のビジネス人生も一区切りできる。今年68歳だから。

上場挑戦の本音

 平崎守氏の経歴から紹介しよう。1949年1月生まれ、東京出身。東北大学法学部卒(公称)。山一証券、大林組などに勤務した後、85年に不動産の(株)ティーセルシー設立、バブル崩壊後の荒波に襲われる。2005年6月に(株)ダックスを買収して、代表取締役に就任した。

 平崎氏は、東京には数多くの友人・知人がいる。そのなかでも岡田知裕氏は、強力な味方である。同氏は東証ジャスダック上場の(株)ユニバーサルエンターテインメント(江東区)の取締役であり、ユニバーサルエンターテインメントの大株主である岡田HDの大株主にも名を連ねている。
 平崎氏は、ダックスの代表取締役に就任した10年前に『上場する』と公言してからのこだわりで、上場準備を急いだという動機は理解できる。それとは別に、平崎氏の心のなかには「岡田氏などの恩人たちにも恩返しをしなければいけない」という気持ちが沸々と湧いてきたと思われる。福岡に来て会社買収して10年、「その節目として一区切りをつけたい」という思いが強まり、急ピッチで上場準備を急ぐようになったのであろう。

 もちろん上場するには、一定の事業規模の確保が必要となる。従来のマンション分譲主体の業態では、上場基準をクリアするのは至難の業であった。ところが、時流を巧妙に掴み、太陽光発電システム販売事業が急成長した。この事業の発展を確信した平崎代表は、『チャンス到来』と勝負に出たのであろう。実際に、この3期で売上が倍増した。ただし16年1月期の売上は、前期並みに収まりそうである。

上場達成の可否は?

 上場審査の段階で、1番目にネックになるのは、揉め事のあり無しである。鹿児島市での物件『パレストステージ城南』の工事遅延をめぐる訴訟がある。ダックスと相手の工事を請け負った松原工務店(宮崎市)とが相互に訴えて、『原告・被告』の身になっている現在、福岡地裁の一審の判決を不服として、お互いが高裁に上告している。筆者であれば、上場審査段階の前に相手との和解策を講じるが、さあ、平崎さんはどう対処するか!!

 2番目の問題は、増収事業の柱をどう組み立てるかである。株式上場の意向を固めたのは、太陽光発電システム販売事業の拡大が期待できたからである。この事業の先行きが不透明になってきた。不動産業以外の他事業では、一挙に売上が伸びるものが見当たらない。そうなると、不動産事業の再編・強化が求められる。手っ取り早く実行できるとすれば、マンション販売を増強させる作戦しかない。
 当面、同社が切望しているのは『パレストリッツガーデン百道』(早良区西新、91戸)の完売である。竣工は17年5月になっている。14年12月、この土地の開札があり、ダックスが27億円で掌握した。当時、『高買いだ』と業者の妬みと怨嗟の声が上がったことは、記憶に新しいところだ。同社としては、70億円を超える事業にさせる意気込みである。この物件の売行き動向次第で、局面が変わる。その勝負の明暗を承知している平崎代表は、この『パレストリッツガーデン百道』即完に注力していくであろう。この販売戦線が、勝負の分岐点である。

 平崎代表の口癖は、「自分が決定に口を挟まないで済む、組織運営のルールを定着させた」である。たしかに、組織運営の水準を高いレベルに到達させたかもしれない。だが、誰がどう見ても、平崎氏を中心に回っている組織であることは間違いない。上場を達成させるには、同氏の強力なリーダーシップ抜きにはあり得ない。平崎氏にとっては、ビジネス人生の総決算を眼前にして、頑強な健康の維持が大切である。健康管理にはくれぐれも用心願いたい。
 平崎氏にしてみれば、「できるだけ不動産事業のウェイトを下げたい」という判断で多角化の道を選択した。そのなかで、太陽光発電システム販売事業がブームに乗って、15年1月期は最高の決算を残した。しかしブームが去り、この秋に審査をパスして念願の上場を果たしたとしても、17年1月期には減収という可能性もある。最後に、上場達成の可否の判断として、『パレストリッツガーデン百道』の売行き如何であると結んでおこう。


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【過去の業績推移解説】
 過去3期の業績を振り返ると、13年1月期5億円からの赤字計上の要因は、トーマツ指導による関連会社株式評価損の膿を出したことである。上場へ向けた第一弾策だったのだ。15年1月に資本金1億9,134万円へ増資。この3期間で売上が倍以上の増収(233.8%)を果たした要因は、太陽光発電システム事業が躍進したことである。だが今後は、さほど期待できない。16年1月期の売上は前期並みと見られる。上場後の増収を牽引する事業が見当たらない。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:平崎 守
所在地:福岡市中央区長浜1-1-1
設 立:1995年2月
資本金:1億9,134万円

【事業業態】
(1)不動産事業~不動産分譲事業、不動産売買・仲介事業、不動産管理事業・不動産流動化事業と多岐にわたっているが、主力は《パレスト》ブランドで展開する自社企画の分譲マンション。最近戸建住宅事業の立ち上げ1から4区画のミニ開発。16年1月期20戸、17年1月期50戸引き渡し予定
(2)太陽光発電システム販売事業~メガソーラー発電所の企画販売から戸建住宅向けソーラーシステム販売、ソーラーパネルだけの販売も行う。ブランド名《パレストソーラー》。太陽電池モジュールは好調
(3)カフェ事業~コーヒーチェーン《タリーズ》のFC経営5店運営
(4)天然水販売事業~天然水《美フォーター》の販売
(5)浄水器事業~セントラル浄水システム《アノア》販売、18年1月期には売上計上可
売上構成*不動産40%、太陽光発電50%、カフェ事業5%、天然水販売5%

 

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