2024年04月20日( 土 )

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(有)相良企画事務所 代表 相良 五郎

「うつ」を病気だとは捉えない

イメージ さがら療法の考案者でNPO法人人間賛歌理事長の相良五郎氏は、「うつ病を治す」という言葉を使わない。「うつ病は心の風邪、病院に通って薬で治すもの」という考え方には、真っ向から異論を唱える。これまで40年以上のカウンセリング実績を持ち、精神的な悩みを抱える延べ1万人以上の人たちへ、「さがら療法」を用いて対応してきた。実際に療法を施す前に、まず相手の話を丁寧に聴くことから始めるが、彼らの多くは、このカウンセリングの時点で精神的な安定を取り戻すという。ただ聴くだけで精神的な改善につながるのなら、誰にでもカウンセリングができそうだが、それができていないから、うつ状態の人が世の中に蔓延している。

 相良氏は、一般的な悩み相談によくある間違いとして、精神的に追い詰められた人に対し、一方的に助言する態度を挙げる。「追い詰められている人には何を言っても心に届きませんよ。彼らの心を占めている不安や恐怖を吐き出させてあげることが先です」と言う。しかし、聴く人が相手のためを思って話を聴いているという「思い込みの壁」に囚われていると、相手の話を正しく聴くことが妨げられてしまうというのだ。

聴く態度に関する大いなる誤解

 慌ただしい現代社会において、コミュニケーションがなおざりにされている。IT技術の発達で、人は情報を選び出すことには器用になったが、人と接して心を通わせることには不器用になった。黙って相手の話を聴くことを一般的に「傾聴」というが、聞きながら自分の思い込みで相手の話を無意識に査定している人が多い。カウンセリング術が未熟な医師もその例外ではない。来院したうつ状態の人を病気だと思い込み、すぐに薬を与えてしまう。原因が、物事を悪い方へと解釈しがちな思考の悪癖にあるとしても、だ。こうして根本的な原因を解決せぬままに、「あなたは病気」という結論を与えられた『患者』が増えていく。

 相良氏は、思い込みに囚われず相手を落ち着かせるような聴き方のことを、「拝聴」と表現する。精神的に追い詰められていると、ときにはかなりの暴言を吐く人もいるが、何を言われても怒らないし、反論しない。ひたすら言葉を容認することで、話し手を尊重しているということを態度で示す。「人には『認められたい』という心の欲があります」と相良氏。欲望とは衣食住などの物質のことであり、これが満たされることで健全な生活を営めると思われがちだが、本当に必要なことは、心の欲を満たすことなのだ。すると相手の気持ちも癒されて、心の澱をすっかりと吐き出すことができる。

 さがら療法を学ぶ意義を、相良氏は次のように語る。「不安や恐怖を吐き出してしまったとしても、思考障害(片寄った考え方の癖)が改善していなければ、依然として障害の残った思考で状況を捉え、同じ悩みを生じさせてしまいます。つまり本当に必要なのは、思考障害を正すことにあるのです。その方法をさがら療法で学ぶことができます」。

 うつ状態を抱える人たちが社会問題となり、労働環境にも影響を与える現在、相良氏は㈲相良企画事務所を飯塚市に移転させようとしている。さがら療法のカウンセリング法を伝授することで「聴観士」を育成し、療法を論文化してWHOへ提出しこれを教材としたカウンセラー養成学校を立ち上げることで、高いカウンセリング力を持った専門家の育成に本格的に取り組もうとしているのだ。うつ状態から解放された人は、「世界がまったく新しいものに見える」と言う。思い込みに囚われない状態になれたこと自体が幸せだとも言う。思い込みの壁「思考障害」をつくらないための心の健康法「さがら療法」の普及は、相互理解による秩序ある社会の構築に貢献していくことだろう。

※記事内容は2015年8月31日時点のもの

<COMPANY INFORMATION>
(有) 相良企画事務所
代 表:相良 五郎
所在地:福岡県飯塚市幸袋731-64
設 立:1999年1月 資本金:300万円
TEL:0948-20-9019
URL:http://kokoro-therapy.jp

<プロフィール>
相良 五郎 氏相良 五郎(さがら ごろう)
1949年生まれ。68年より46年間福祉業界に身を置く。91年から国や社会に精神障害福祉法の制定をはたらきかけ、全国各地での施設開設にも尽力し実績を残した。
2013年、自身が考案した療法を「さがら療法」として集成、これをもとに心の専門家「聴観士」を育てている。

 

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