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特別取材

目に見え始めた春吉開発 天神博多回遊軸の期待高まる(3)
特別取材
2008年1月25日 10:38

渡辺通・春吉線がカギ


 今後、春吉地区の開発のキーポイントとなるのは、渡辺通・春吉線の整備になってくるだろう。現在、福岡市は、“天神地区”と“博多駅地区”という2つの柱を「点」として開発が進んでいる。これらの点を「線」にし、さらに「面」にしていくためにも、渡辺通・春吉線は非常に重要と言える。

 もともと、博多駅地区は、1963年に駅が現在地に移転し、博多駅地区土地区画整理を契機に、合同庁舎が誘致され、業務施設が徐々に集積していった。その後、75年に山陽新幹線博多駅が開業し、さらに福岡空港にも近接するという利便性から、広域的なビジネス街として急速に発展した。商業施設を多数集積する天神地区とは違うベクトルで成長してきたという点で、福岡市全体の魅力向上に貢献している。

 博多駅自体も、2011年には新幹線の全線開業とあわせてリニューアルされ、新博多駅ビルが開業する。同ビルの核テナントとして阪急百貨店が進出、さらに準核テナントとして全国的にも知名度の高い東急ハンズが出店に合意しており、天神地区の3百貨店、雑貨で競合する天神ロフトへの影響は避けられないだろう。さらにJR九州の専門店街アミュプラザも入居し、複合映画館やホールも設置して、多機能型商業施設とする予定。中・長期的に見れば、これまでのビジネス街としての顔だけはなくなるため、天神地区と博多駅地区の“棲み分け”という考えからは脱却しなければならなくなる。両地区の回遊性を高め、相乗効果を十分に発揮させていくためにも、渡辺通・春吉線の整備は必要不可欠な事業だと言える。

 また、建替え後の新博多駅ビルは、博多郵便局や新三井ビルと2階の歩行者回廊で連結され、さらに、新駅ビルの完成に合わせ、現キャナルシティの東側に第2キャナルを開業する計画も立ち上がっている。これが実現すれば博多駅地区とキャナルシティの提携が強化され、さらに渡辺通・春吉線によって、その流れは天神まで延伸することになる。渡辺通・春吉線は、博多駅地区→キャナルシティ→天神地区という流れの軸として位置づけられよう。


求められる地場企業の底力

 開発が進むのは、都市としての魅力・機能性を向上させるという点で、大変喜ばしいことだ。ただ、懸念がないわけではない。

 例えば、春吉地区に着目すると、開発、施工業者を含め、あまりに地場企業の介入が少ない。地場経済に還元することができなければ、開発で得ることのできるメリットは半減してしまう。散在する地権者たちとの交渉には、かなりの労力、資金力、時間が必要となるだろうが、だからといって、知らん顔で通すのはいかがなものか。

 先にも述べたとおり、市財政の悪化から、今後の開発は、東京で見られるような、既存市街地の土地高度利用計画に基づく、民間による再開発がメインになってくると考えられる。となれば、当然、天神・博多駅周辺の未開発地区の開発が進展すると予想され、地場経済界が入り込む余地は、まだまだ残されていると言えよう。ただ中央資本も、そのチャンスを虎視眈々と狙っており、現在の地価高騰傾向は、その表れでもある。

 また、昨年のパラマウント計画頓挫は、日本トレイド側の手抜かりという要因が大きいものの、福岡経済界の無関心さも指摘されている。よそ者に対して寛大だと言われる福岡人気質だが、単なる傍観者として開発を眺めていては、単なる弱点にしかならない。西通り、大名地区の風景は、中央大手によってつくられてしまった。

 動き出した渡辺通り・春吉地区の開発事業の現状は、こういった流れを象徴する案件であろう。一市民としても、地場の底力を切に願う。


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