ホリエモンから8億儲けた話
2005年の秋から丸美の信用不安が囁かれだした。下記に触れるがポイントは金丸氏の猪突猛進の経営手法からくるSPC(ゴールデンサークル特定目的会社)を活用した不動産を証券化することによるトラブルである。このシリーズ(5)で触れたように、丸美はオフィスビルを買い取った。そうして2003年9月に本社ビルをSPCに19億4,500万円で売却したことが、丸美の不動産証券化事業の第一歩となった。そのビルをまたまた2006年5月に、新たなSPCに約30億円で売却した。そこで丸美は、10億円近い資金を得たのである。こんな美味しい話は、簡単には転がっていない。
このSPC転がしから、様々な問題が発生していった。一例としては、証券化ネットワーク(株)(本社・福岡市中央区)との裁判である。丸美の本社ビルを最初に証券化した時に、アレンジャー(証券化の仕組み作りなどを担当)だったのが、証券化ネットワークである。そのときにこの会社と金融機関にはコンサルフィーが1億円以上払われたという。そして2006年には、熊本の物件を証券化しようとして2社の間に支払いを巡るトラブルが生じた。このような話が表沙汰になり、「丸美はおかしい。上場はできないのではないか」と囁かれ出した。
ところが、悪い話が先行する一方では2006年の3月頃、「金丸氏はホリエモンのライブドアによる株の転がしで、8億円儲かった」という剛毅な話が飛び込んできた。早速、金丸氏に取材をしてみるとこの1年前から若者たちに流行っていたネット株取り引きに興味を示し、チャレンジを始めたのだそうだ。その実験の意味合いをもつ銘柄として、ライブドアを扱ってみた。資金は銀行から2億円調達したが、2005年、この株は高騰していった。2006年に入って株価は急降下したが、早く見切って店仕舞いをした。金丸氏と応対した感触からは「最低3億円の利益を得たな」との印象を得た。同氏の人生にとって、この「ホリエモンから儲けを得た」強運は、ビジネス人生において最後であったかもしれない。
監査法人との対立・上場を断念
このシリーズで再々指摘した、「上場の志が命取りになる」という最悪の事態が襲ってきた。それはあずさ監査法人との対立・契約解除である。表向きは監査料金を巡っての対立であった(あずさ側は丸美の連結に対する監査料金を要求し、丸美の方は単体料金でしか応じられないという立場が相いれられず、決裂した)。監査法人との拗れは丸美側にとって不利になった。世間は「丸美が変なことをしているのであろう」と、あらぬ疑いを抱くようになる。
また致命的な問題が露呈した。丸美は場当たり的にSPCを組んできた。このSPCの取引が、身内間の取引であると認識されたのである。あずさ監査法人は要するに「不動産を証券化してオフバランスしたつもりが、身内との取引であるからオンバランスである」と指摘したのだ。こうなれば、過去の決算も修正を余儀なくされる。監査法人と丸美との反目の背景には、前記した決定的な認識の違いがあったのである。別の監査法人に代わっても、丸美が主張するオフバランスの認定が覆されることはなかった。ここに、丸美の上場への道が塞がれたのである。
つづく