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今、歴史から元気をもらおう

【連載】 今、歴史から元気をもらおう(17)天下分け目の鳥羽・伏見
今、歴史から元気をもらおう
2008年10月 2日 09:30

 慶応2年(1866)12月5日、徳川慶喜が15代将軍に就任した。同じ月に孝明天皇が崩御されるというあわただしい年末だった。翌年の10月4日、慶喜が突如、大政を朝廷に奉還するとともに将軍職を辞した。実はこの日、薩長両藩の武力倒幕派が朝廷内の急進派を動かして慶喜の討伐を命じる密勅を出す用意をしていたが、空気を察した慶喜が先手を打ったのである。新政権最初の会議は12月9日、慶喜欠席のまま開催された。この席で松平春嶽らが、慶喜を会議のメンバーにと主張したが、「短刀一本でことがすむ」という西郷隆盛の恫喝に一同は沈黙し、慶喜の辞官と領地の返納が決定した。家康以来の伝統ある権威を一挙に打ち砕かれた幕府側の不満はいやがうえにも高まった。

 12月25日には、三田にある薩摩江戸藩邸が焼き討ちされるという事件がおこった。当時世上を騒がせていた浪人たちが三田藩邸に出入りしていたので、暴発する彼らに対して市中取締を担当していた庄内藩兵と新徴組が攻撃を仕掛けたものだが、その背後には幕府勘定奉行小栗上野介の意が働いていたともいわれ、また逆に、薩摩側の挑発だったという説もある。その真偽は定かではないが、いずれにせよこの焼き討ち事件が鳥羽伏見の戦いの引き金になったことだけは間違いない。

 戦気十分の幕府方は、年が明けた早々の元日から京都進撃の準備をはじめた。諸藩連合二万の幕軍は、2日から行動を起こし鳥羽・伏見への進撃を開始した。対する新政権側の主力は五千の薩長軍である。西郷、大久保の二人は、長州の広沢兵助に相談して応戦の手配を相談しあった。たとえここで敗れるようなことがあっても、かねてからの計画通りに天皇を擁して山陰道を逃れ、その地から倒幕の詔を諸国に下せば、ついに勤皇軍が各地におこり、幕府を倒すことができるであろうというのである。戦略としてはきわめて漠然としていて具体的な戦術も用意されていない。この時点では、西郷も大久保も、兵力にまさる幕軍に対して薩長軍はとても勝ち目がないと考えていたのである。

 年が明けての1月3日、鳥羽伏見の戦いが始まる。薩軍は鳥羽を守り長州軍は伏見に陣を敷いていた。戦闘は鳥羽方面からはじまった。薩軍はここに大砲隊と小銃隊を配置していた。小銃隊の一隊は林の中で迎撃の構えをとっていた。薩摩伝統の寡兵よく大兵を制する「釣り野伏せ」の戦法である。そこに五千の幕軍が縦隊で突っ込んできた。大砲の一撃から始まった銃撃戦は薩軍の圧勝におわった。半数にも及ばない薩軍の銃撃に混乱し、反撃もできないままに幕軍は敗走した。鳥羽方面の砲声をきいた伏見でも戦いがはじまった。幕軍のなかでも、会津兵と新撰組は勇敢に戦ったが所詮火力が違っていた。新鋭銃で武装した薩長軍は軍装も洋式で機動性に富んでいた。一方幕軍の武器は旧式銃の上に、軍装も陣笠・陣羽織などを着用するなどまちまちだった。4日の夕方、討幕軍に菊の御紋を印した錦旗がかかげられ、官軍となった薩長方に対し賊軍とされた幕軍の士気は一気にしぼんでしまう。5日になると、もともと混成部隊で指揮命令系統がしっかりしていなかった幕軍は総崩れとなった。

 鳥羽・伏見での勝利は薩長にとっては意外だった。優勢な海軍を有し圧倒的な兵力をほこる幕府軍が負けるはずはなかったのである。ただ、薩長軍の士気は高く、死を恐れない薩軍と四境戦争を戦い抜いた長州軍に対して、長年の安逸に馴れ戦うすべを知らなかった幕府連合軍は、わずかなきっかけで大崩れする要素をはらんでいた。錦旗を目にした親藩の裏切りも相次ぎ、ついには「最後の一兵まで戦え」といっていた総司令官の慶喜が、戦うべき主力艦の開陽丸に乗って戦線を離脱してしまった。260年にわたって我が国に君臨してきた徳川政権はもろくも瓦解した。「関ヶ原」が天下分け目の決戦だったように、「鳥羽・伏見」もまた天下分け目の戦いであった。それぞれの勝因、敗因はさまざまに言われるが、歴史の流れは人智を超えたところで大きく動く。「関ヶ原」も「鳥羽・伏見」も、すべては歴史の必然なのであろうか。

小宮 徹/公認会計士
(株)オリオン会計社 http://www.orionnet.jp/


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