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東京レポート

社長解任! シャルレのMBO迷走(下)
東京レポート
2008年12月 9日 08:00

相次ぐ内部告発

 林氏がなぜ、三屋氏以下の全役員を解任したのかは謎であった。創業者一族が大株主に名を連ねており、解任という荒っぽい手を使わなくても社長になれたからだ。解任の狙いが明らかになるのは、今年9月19日である。
 林社長は、創業者一族によるMBO(経営陣が参加する買収)計画を発表。モルガン・スタンレーグループの投資ファンドが創業家の資産管理会社を通じて、TOB(株式公開買い付け)を実施し、非上場化を目指す。創業家は投資ファンドに再投資する。買い付け価格は1株800円。シャルレの取締役会はMBOを承認した。

 ところが、MBO計画が発表されるやシャルレ社内から告発が相次いだ。1点は、1株800円の買い付け価格が不当に安い。もう1点は-これが最大の問題だが-、取締役会でMBOを承認した社外取締役らが買付者である創業家側のアドバイザリー会社からアドバイスを受けていたのは不公正で、社外取締役らに利益相反行為があった、とする内容。
 大証は事態を重視。シャルレは4名の弁護士による第三者委員会の設置に追い込まれた。同委員会は10月31日、調査結果を発表。1株800円でのTOB価格は「評価できる」としたが、承認のプロセスに創業家側のアドバイザーが関与したのは「透明性・公正性に問題がある」と結論づけた。
 これでMBO計画は迷走。シャルレはMBOへの賛同を撤回。三菱東京UFJ銀行はMBOのために予定していた116億円の融資を取りやめた。TOBは再三延期になった。
 創業家を除く執行役の経営陣は改めて調査を実施。林社長が創業家アドバイザーと共同でMBO計画へ賛同するように誘導していた事実が発覚。利益相反行為だと判断して、林社長を解任した。

公正に欠けたMBO承認

 以上がMBO迷走の経緯だが、なぜ内部告発が相次いだのかは、説明が必要だろう。
 シャルレの取締役は5名。林勝哉社長と母親の林宏子氏(退任していたが復帰)、3人の社外取締役で構成される。取締役会は、MBOに賛同するかどうかを決議する。発案者である創業者一族の林親子は直接の利害関係者のため決議には参加できないので、残る社外取締役3名で決議を行なう。焦点は価格査定の算定根拠となる利益計画である。
 シャルレ取締役会と買い付け側のモルガン・スタンレーは別々の第三者機関に価格査定を依頼。シャルレ側は1株1,104~1,300円、モルガン側は1株646~908円の回答を得た。社外取締役は営業利益見込みを大幅に引き下げて利益計画を修正。この修正に基づいてはじき出されたのが1株800円という価格だった。
 この価格算定過程で、林社長と創業家のアドバイザーでMBOを企画したファンドの幹部が、社外取締役に利益計画を引き下げるように働きかけ、TOB価格はモルガン側の査定内におさまった。社外取締役は、TOBが適正であるかを公正に判断しなければならない立場にあるが、創業家側に有利な判断をした。これが公正性に欠けるとみなされた。

MBOの狙い

 MBO騒動は林氏の狙いをあぶり出した。創業家がMBOを隠れ蓑にして株式を大量に売却し現金を得る手段に利用していたことだ。TOBに応じれば約20億円のキャッシュが転がり込んでくる。いったん非上場化したあと、再上場して多額の上場益を手にするには、一般株主から買い取る価格を安く抑える必要があった。まずMBOありき。MBO計画を実行するのに、邪魔な存在になる三屋氏ら全取締役を解任したわけだ。錬金術としてのMBOを見透かされて、執行役員や幹部社員から猛反撃を喰ったのである。
 社長を解任されたとはいえ、創業家が大株主であることには変わりない。創業家側が巻き返しに出るのは必至。混乱はまだまだ続く。(日下淳)

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