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東京レポート

武富士が大ピンチ 新規融資を停止 格付けはデフォルト寸前(上)
東京レポート
2009年12月 7日 10:04

 消費者金融大手の武富士(清川昭社長)が大ピンチだ。消費者金融大手が、利息制限法の上限を超える「グレーゾーン金利」を取っていた利息の返還に備え、巨額な利息返還引当金を計上したとき、危機を乗り越えたと思われたが、そうではなかった。リーマン・ショックによる金融危機で苦境に陥ったのは、メガバンクの傘の下に入っていない独立系のサラ金だ。債務の返済猶予を求めて私的整理に駆け込んだアイフル(福田吉孝社長)に続いて、武富士の経営危機が表面化した。

貸し付けほとんど停止
 「武富士、貸し付けほとんど停止」。朝日新聞(12月4日付朝刊)は、武富士の資金繰り悪化を報じた。

<武富士の11月の営業貸し付け(新規融資と追加の合計)は約15億円にとどまった。2月の中期経営計画策定時点では毎月100億円以上を想定。10月は70億円弱を維持していたが、11月に急減した>

 同紙によると、三菱UFJ系のアコム(木下盛好社長)は毎月約380億円、三井住友系のプロミス(久保健社長)も毎月300億円程度の貸し付けを行なっている。これに対して、独立系のアイフルは約35億円、武富士が約15億円。
 メガバンクの傘の下に入っているかどうかによって、銀行系と独立系の資金繰りは大きく左右されていることがわかる。

1,300億円の現金捻出計画
 アイフル・ショックが直撃した。9月に独立系のアイフルが私的整理に踏み切った。次は武富士か。注視を集めるなか、武富士は自力再建を目指して再建計画を打ち出した。
 地銀からの借り入れで320億円、トヨタ、パナソニック、NTT株などの保有株の売却で100億円、新規貸し出し抑制で600億円、剰余金の取り崩しで300億円、合計1,320億円の現金を確保して、有利子負債の返済に充てるというものだ。
 これを受けて、米格付け会社・スタンダード&プアーズ(S&P)は10月1日、武富士の格付けを「BB+」から「B-」に5段階引き下げた。一気に5段階も引き下げるのは異例なこと。銀行のバックがないため「資金調達の制約や有利子負債返済負担の増加で、短期的な資金収支が悪化している」というのが、引き下げの理由だ。武富士の資金繰りに赤信号が点滅はじめたと警告を発したのである。

債務不履行寸前に格下げ
 武富士は11月16日、昨年発行した転換社債(株式に交換できる社債)の一部について、事実上の返済の減額や猶予につながる組み替えを提案した。対象は、転換社債700億円のうち最大400億円。具体的には、(1)転換社債を額面の半額以上の現金に交換、(2)額面の4分の1以上の現金と残額相当分の普通社債に交換、という2つの選択肢を投資家に示した。
 転換社債は、来年6月に繰り上げ償還を求めることができる権利が投資家側に与えられている。700億円の繰り上げ償還を求められたら、資金繰りのさらなる悪化が生じかねない。そこで、条件変更によって、繰り上げ償還のかなりの部分を免れようという苦肉の策だ。
 この提案を受け、米格付け会社S&Pは11月17日、武富士の格付けを「B-」から「CC」に4段階引き下げた。「投機的要素が最も高い」とされる格付けで、「デフォルト(債務不履行)」の一歩手前。デフォルトとは、借金を約束通り返済できないことを意味する。
 S&Pは、転換社債の債務削減や返済猶予につながる条件変更が成立すれば、「デフォルトに当たる可能性が高い」と判断した。実際に減額がなされれば、S&Pはデフォルトとみなすとしている。破綻認定である。わずか2カ月足らずの間に、格付けが9段階も引き下げられた。異常な事態なのである。


(つづく)

【日下 淳】


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