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ビジネス最前線

トヨタ自動車の経営悪化
ビジネス最前線
2009年1月23日 13:27

 トヨタ自動車の経営悪化に歯止めがかからない。2008年3月期決算で2兆円もの営業利益を稼ぎ出したトヨタは09年3月期では1,500億円の営業赤字に陥ると業績見通しを修正したが、10年3月期にはさらに悪化しそうで、赤字幅が1兆円を超えそうだと言われる。創業家出身の新社長に再建を託すトヨタはいま未曾有の危機にある。
 豊田章男氏(52)の第一声は、「創業の原点への回帰」だった。用意した原稿に目を落としながら、独特の甲高い声でこう語る。「お客様第一、現地現物という創業の原点に立ち返りたい」「あえて言うならば現場に一番近い社長でいたい」。1月20日、東京で開かれた新社長内定の記者会見で、14年ぶりに大政奉還されることとなった創業家の豊田氏が盛んに繰り返したキーワードが「原点回帰」と「現場」である。

 それに反して、副会長に退くこととなった渡辺捷昭社長の言葉からは無念さが感じられた。「アッと言う間の4年間、とても短く感じた4年間でした。かつて経験したことのないようなスピードで環境が変化し、それへの対応に追われました」。何べんも「短かった4年間」という言葉が繰り返され、在任期間の短さが強調された。
 かねてから、いずれはプリンスの豊田章男氏が社長に就くと見られてはきた。章男氏は豊田章一郎名誉会長の長男で、1984年に入社以来、米GMとの合弁会社NUMMIの副社長やインターネット、トヨタ生産方式、調達、さらには国内販売と、重要なポストを歩みながら帝王学を身につけてきたことで知られるからだ。だが、今回の人事は、従来からの下馬評どおり、と言うほど生易しくはない。トップ交代人事は豊田一族による渡辺更迭という色彩が強いのである。

 渡辺現社長のもとでトヨタは米国で二つの工場を新設してきた。ひとつが06年11月に大型SUV「タンドラ」の生産を始めたテキサス工場で、もうひとつがハイブリッド車「プリウス」をつくるミシシッピ工場だ。だが、ガソリンを大量に食うタンドラはあいにくの金融危機でいまや売れる見込みがほとんどない。ミシシッピ工場も、生産したところで在庫がたまる一方と予想されるため、生産開始を延期した。
 前期に2兆円超の利益をたたき出したトヨタは、今期の上半期(4~9月)に5,820億円の営業利益を計上している。それにもかかわらず今期の通期で1,500億円の赤字に陥るということは、下半期の半年間だけで7,300億円もの赤字が出ていることを意味する。米国や新興国市場の急落に加え、北米の二つの工場の失敗を考えれば、来期(10年3月期)の赤字幅が1兆円を超える、という見方は不思議ではない。

 この事態に怒りを覚えたのが豊田章一郎名誉会長だった。渡辺現社長と海外販売担当だった浦西徳一元副社長、財務など内部管理面を担当する木下光男副社長の3氏を「戦犯」視し、「本来なら市場が立ち上がってから進出すべきだった」「(ゼロからすべての部品をつくるタンドラのやり方ではなく)もっと他車種の部品を用いてつくるべきだった」などと取材に訪れた記者たちに漏らしている。こうした豊田家の不快感を察知した目端の利く幹部層が続々と章男氏のもとを訪れ、章男氏の口から「市場の声を吸い上げるパイプが目詰まりしていないだろうか」などと社内で発言させることで、いわば創業家の威光を背にして渡辺路線の幕を引かせた色彩が濃厚なのだ。逆に言えば、サラリーマン経営者の渡辺氏では事態を抜本的に改めることはできない、と思ったのだろう。章男氏が内定の記者会見で「現場を大切にしたい」「お客様の声をしっかり聞く」と再三強調したのは、すっかり官僚化した渡辺社長ら現経営幹部には「それができていない」と考えたからに違いない。

 あれだけ無敵と見られてきたトヨタも、実は米国のバブルに踊っていた。貧しい人に無理やり借金をさせて郊外に家を建てさせ、ガソリンがぶのみの車を買わせる。そうして売れたのがSUVやレクサスだった。ところが米国バブルがはじけると、一気に負のスパイラルに落ち込んだ。トヨタ直営の12工場が立地する愛知県では、9,000人もいた期間従業員を段階的に削減し、最終的にはゼロにする方向で検討が進められている。トヨタ傘下のグループ各社や二次、三次下請けの工場に大量にいたブラジル人労働者も、相次いでクビを切られている。豊橋市や岡崎市などでは子連れのブラジル人ホームレスまで現れ始めている。深刻なトヨタ不況が、好景気を謳歌してきた名古屋経済を襲っているのだ。

 章男氏へのスイッチは、すっかり傲慢になっていたトヨタの体質を反省する好機ともいえる。経団連会長だった奥田碩取締役相談役は、製造業の労働力不足を念頭において、一時あれだけ外国人移民の受け入れに熱心だったが、今トヨタの足元では容赦ないブラジル人切りが進行中だ。奥田氏は11月、自身が座長を務める公職に関連して「マスコミに対して報復でもしてやろうか。スポンサーをひくとか」と発言してもいる。
 驕れるもの久しからずという、盛者必衰の理が改めてトヨタの現状から浮かび上がるのである。だからこそ章男氏が「言い古された言葉ですが、とにかくお客様の声をしっかり聞く。お客様第一主義です」と低姿勢に徹しているのだ。

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