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“大蔵”帝国の全面復活(下)
ビジネス最前線
2009年10月29日 08:00

 「脱官僚依存」を掲げ、自民党の長期支配から政権を奪取した鳩山民主党政権。だが、国土交通省や厚生労働省には厳しい姿勢で臨むものの、官庁の中の官庁である財務省にはきわめて宥和的な姿勢であることが次第に浮き彫りになっている。総選挙投開票以前の段階で「財務省は敵に回さない」(前原誠司氏=現国土交通相)、「役所を全部敵に回すとたいへんだ。国交、農水、厚労で(改革を)やっていく」(小沢鋭仁氏=現環境相)と、後に鳩山政権の要職に就く民主党政治家は、相次いで財務省と手を結ぶ意向を示していた。実際に政権がスタートすると、鳩山政権中枢の行政刷新会議の事務局長には元財務官僚の加藤秀樹・構想日本代表が起用され、鳴り物入りで登場した国家戦略室の「予算編成のあり方に関する検討会」のメンバーにも、財務官僚出身の田中秀明・一橋大准教授が就いた。「行政刷新会議も国家戦略室も官邸も、内部の官僚スタッフは財務省出身者だらけ。右を向いても左を見ても、財務省から出向している役人がいます」(経産省官僚)という「財務省支配」である。
 経営危機下にある日本航空の再建問題も、表面上は前原国交相が主導してきたかに見えるが、影で糸を引いているのは財務省といわれている。小沢一郎氏が官房副長官時代に彼の秘書官を務めた財務省の香川俊介・総括審議官は、8月の段階で「(JALの大口融資先である)日本政策投資銀行には危機感がなさすぎる」と憂えていた。香川氏ら財務省幹部にパイプを持つ関係者によると、そこにJAL再建策の売り込みをかけていたのが元再生機構専務の冨山和彦・経営共創基盤CEOだった。
 鳩山内閣が組閣した9月16日の2日前に、内々に国交相就任を告げられていた前原氏は、同15日にかねてから親しい香川氏にJAL問題を相談したところ、香川氏が冨山氏ら産業再生機構OBからなる「タスクフォース」の結成を助言したという。JAL再建では、この香川氏と、勝海舟の子孫である勝栄二郎・主計局長が関与し、国交省航空局の官僚を排除し、前原大臣直轄で再建策を練るよう誘導した形跡がある。
 ところが、タスクフォースのJAL再建策が明らかになると、財務省はとりわけOBたちへの年金給付の削減部分で難色を示した。公的資金注入で救済するのに、そのうち1,800億円相当が年金受給者への「一括払い」に回る点が、ゴネ得を許しているように映ったからだ。JALの年金受給者の受給額は、年間500~600万円台で、一括払いの手切れ金も推定約2,000万円と常識はずれだ。当然「優雅な暮らしのOBの生活維持に税金が使われるのはたまらない」(民主党参院議員)と批判が浮上したため、財務省は予想される世論の反発を見越して、前原国交相の頭越しで再建策を誘導し始めている。
 財務省が影で糸をひきたがるのは、5,000億円規模の社会資本整備事業特別会計・空港整備勘定(旧空港整備特別会計)にメスを入れたいからだ。国の一般会計約80兆円に対し、各省が持つ21の特別会計の歳入歳出規模は200兆円を超える。なかには年金など削りにくいものもあるとはいえ、各省庁が自民党族議員と結託し、財務省主計局に手を触れさせなかった予算の「聖域」である。
 財務省がJAL問題に熱心なのは、自民党族議員の力が弱まっている間に公共事業関連の特別会計を手中に収めたい意向があるからだ。

(了)

【神鳥 巽】

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