ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

特別取材

シリーズ「保育」 永野繁登・福岡市保育協会理事長に聞く(1)
特別取材
2009年6月23日 13:52

 麻生首相が言い出した厚生労働省の分割は頓挫したようだが、注目されたのが「幼保一元化」の問題である。保育事業にも改革の波が押し寄せるなか、国は保育事業の未来を描ききれていない。不況の影響で待機児童が増えるという状況の今、福岡市保育協会理事長で保育行政に詳しい永野繁登さん(68)に、保育の問題について聞いた。

  ──つい最近、麻生首相の思いつきから「幼保一元化」が取りざたされる事態となりました。
 これは保育園に対する予算削減の意図があるとも指摘されていますが…?

永野繁登・福岡市保育協理事長
 永野 私もそう思います。制度を変えるということは、財政の縮減、予算の削減しかないですよね。予算を削るにあたっては、市場原理に任せておけばいいんだと言い出す。何で一番に、福祉にその理屈をあてはめるのか分からないんですよ。幼保一元化の話の裏には予算削減が隠されていますね。

 ──要するに、予算額が低い幼稚園に合わせてしまえということでしょうか?

 永野 予算規模で言うと幼稚園が約600億円、保育園が3000億円台程度。約5倍でしょうか。1人当たりに換算してもそんなものです。幼稚園でできるのなら、一緒にすればいいんじゃないかという発想を突っ込んでくる。その程度の発想ですよ。

 ──現場が全然わかってない?

 永野 わかっていない。例えば3、4、5歳児については、幼稚園よりも保育園のほうが時間長いんです。時間も長いうえに、おやつなんかも出します。そういう現実は全然見てくれない。議論にもならない。おかしいと思います。

 ──政治家は勝手に幼保一元化と口にしますが、時間のことを含めて、幼稚園に今の保育所と同じレベルのことができると思われますか。

 永野 現場が望んでいるかどうかです。それを是非調べてくださいと言いたい。幼稚園の関係者からも、なんで幼保一元化なのかという声が聞こえてきます。

 ──幼稚園も反対ということですか

  永野 反対ではないんでしょうか。幼稚園の現場でも、少なくとも福岡市内は賛成していないのではないですか。そこは、直接幼稚園の方々に聞いてもらいたいところですが…。
 ただ幼稚園の方々とは、よくお会いしています。
 なぜかというと、今、幼稚園でも保育園をやることができるんです。「認定子ども園」といいます。幼稚園がどうしても保育園をやりたいと希望すれば、1箇所で両方やれるようになっているんです。同じ教室でもやれるんですよ。

 そもそも、幼保一元化の問題は、平成15年頃に出てきました。その時は、幼保一元化はこれでおしまいなんだといって、認定子ども園ができたんですね。もちろん私ども(保育園側)は反対しましたよ。なぜかと言えば、保育園の最低基準が各県で決まっています。しかし、幼稚園の大半はその基準を満たしていないのです。基準より低いことが子どもの幸せになりますか。それはおかしいと思います。
 だから反対してきたんです。保育園が増えることには反対はしません。待機児童を減らさなければならなにことは明らかなんですから。
 だから幼稚園にもお願いしています。保育園の基準を満たすようなんとかしてくれませんか、と。

 ──民主党の政策についてはどう見られていますか?

 永野 民主党はマニフェストに幼保一元化と明記していました。保育予算の一般財源化もうたっています。民主党政権になったら、一般財源化されますよ、幼保一元化も強行されますよ、と言ってきたんですが、もう言えなくなりました。自民党の麻生さんや与謝野さんが同じことを言い出したんですからね。正直、驚きました。

 ──民主党は幼保一元化の意味が分かっていると思われますか?

 永野 わかってないですよ。全然わかってない。幼保一元化について、私が何で反対するかというと。幼保一元化というのは、幼稚園が保育園になることでは決してありません。保育園が幼稚園化するということなんです。先ほど話したとおり、補助金が少なくて済むんです。今は福祉ですが、そうではなくなるということです。私どもは児童福祉です。自治体や国が全部面倒見ないといけないわけです。保育の質までという話ですね。ところがこれが自由化して、幼稚園と同じになったら、もう面倒見ることがなくなります。だから幼保一元化にこだわる。しかし、それでは子育て支援にはならないでしょう。本来の「保育」が置き去りにされるから反対するんです。

■永野繁登氏 プロフィール■
東京大学農学部卒。財団法人日本農業コンサルタンツに勤務後、母親が経営していた永野福祉会玉川保育園を継いだ。現在、永野福祉会理事長、玉川保育園園長、福岡市保育協会長、日本保育協会理事などを務め、審議会などで厚生労働省や福岡市の保育行政に対して提言を行なっている。趣味はテニス。

※記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

特別取材一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル