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東京レポート

大量消費と石油依存社会の終焉 GMの破綻で早まる電気自動車への転換(2)
東京レポート
2009年6月22日 08:00

 1927年は歴史的な「GMの勝利」であった。T型フォードはGMに敗退し、生産停止に追い込まれた。それは、大量生産とコストダウンという戦略に対し、モデルチェンジで売るというマーケティング戦略の勝利であった。以降82年間、GMは自動車王国の覇者であり続けた。

<大量消費社会の創出から低炭素社会への転換>
 モデルチェンジというマーケティング手法で消費を創出する、というスローンの発明は、あらゆる産業がモデルとして取り入れた。毎年、流行のファッションが生み出されるのは、新しいファッションが流行すればそれまでのものが時代遅れとなり、消費者に買い替えを促して最新のファッションが売れるようにするためだ。
 スローンが発明したシステムは、資本主義の矛盾と呼ばれた恐慌を克服した。過剰生産による価格の暴落を恐慌というが、生産と消費の乖離がもたらす恐慌は資本主義に必然的なものとみなされていた。ところが、モデルチェンジで消費を創出することによって、大量生産に見合う大量消費が可能になった。
 20世紀後半に未曾有の物質的繁栄を実現したシステムが、このGMモデルだ。モデルチェンジと広告によって消費需要をつくり出し、クレジットカードで欲しい時に買えるようになった。GMは大量消費社会の生みの親であったのだ。
 大量消費社会を可能にしたのは石油だ。石油が安い価格で大量に手に入っていたので、消費市場を自ら創り出すシステムが機能した。だが、石油は無限ではない。74年と79年の2度にわたる石油危機が、GMなどビッグスリーが凋落する転換点になった。無尽蔵かと思われていた石油が実は有限で、タダ同然に使っていた石油の価格が高くなったためである。
 その結果、モデルチェンジを繰り返し、派手なデザインと大型化を競ってきたアメ車は、石油をガブ飲みする高燃費の資源浪費型製品の代名詞になった。  時代は、石油依存社会から低炭素社会へと大きく変わろうとしている。ガソリン車から石油を必要としない電気自動車や電池自動車への転換だ。米政府はGM再建のために、国を挙げて電気自動車への大転換を図ってくるだろう。
 こうなると問題は日本車だ。日本の自動車はハイブリッド車が主流で、いきなり電気自動車とはいかない。日本の自動車メーカーはガソリン車から電気自動車への早急な転換が求められる。低炭素社会では、電気自動車を制する者が自動車産業を制することができるからだ。
 石油と自動車の20世紀に最も成功したGMの破産は、石油依存社会の終焉をもたらすと同時に、低炭素社会への転換を早めることになる。
 覇者GMの破産は、『平家物語』がいう盛者必衰の帰結であった。
 〈祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる人も久しからず、唯春の世の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ〉

~了~


【日下 淳】

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