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三井住友、三菱東京UFJを手玉にとった 詐欺会社、コシ・トラスト(2)
東京レポート
2009年6月 2日 08:00

<紹介融資>
 詐欺の舞台となったのは、東京・杉並区のJR高円寺駅前にある三井住友銀行高円寺法人営業部。03年秋ごろから、偽造した決算書や納税証明書をもとに資金を引き出した。戸建てや小型商業ビルの取得を名目に、1回当たりの融資額は数千万円から2億円程度と小口。その分、数をこなさなければならず、ペーパーカンパニーまで使っていた。
 摘発後に明らかになったところによると、コシ社では、決算書を偽造する役や融資の受け皿を調達する役などに役割分担して、不正融資を引き出していたという。
 紹介者がいる融資は審査が甘くなりがち、という盲点を突かれたとされているが「行員の協力がなければ、ここまで巨額な融資は不可能」というのが銀行関係者の常識だ。
 三井住友銀行には協力者がいた。高円寺法人営業部の行員(44)。中林容疑者より4歳年上の行員は、大学の後輩で野村證券出身というブランドをすっかり信用した。
 スクープ以来、コシ社関連報道をリードしてきた読売新聞によると、行員はコシ社に自分の家賃410万円を振り込ませたうえ、休日には一緒にクルーザーで釣りを楽しみ、高級外車を借りるなど完全に取り込まれていたという。
 不心得な行員は、どの銀行にもいる。だが、取り込まれたのはこの行員だけでなかった。この行員は神奈川県の鶴見法人営業部に転勤。高円寺法人営業部の後任も、派手な接待攻勢で取り込み、さらにその上司とも緊密な関係を結んだ。
 かくして、鶴見法人営業部、高円寺法人営業部、上司が転勤した新宿法人営業2部で、中林容疑者からの紹介先に融資を膨らませていった。実績をあげたい3人組は、本店稟議を通すために、コシ社が偽造した書類を黙認したのだろうか。奇怪というほかはない。
 コシ社による紹介融資に嵌められたのは三井住友銀行だけではなかった。三菱東京UFJ銀行恵比寿支社は、コシ社の紹介で約80億円融資し、数十億円の焦げ付き。地銀大手の千葉銀行もコシ社の紹介で14億円融資し、半分の7億円が焦げ付いた。
 借りたカネは返さなければならない。返すためにコシ社が駆け込んだのが、悪名を轟かせていた貸金業者のSFCG(旧商工ファンド)。不動産を担保にSFCGから借り入れた資金を三井住友側への返済に充てた。06年12月に金融庁検査で指摘されるまで、銀行側が不正を見抜けなかったのは、回収が滞らなかったためだ。

<闇社会の餌食>
 蛇の道は蛇。コシ社がメガバンクをたぶらかしてカネを引き出していることは、闇社会に瞬く間に広まった。コシ社には暴力団が群がった。銀行から引き出したカネで、グループ内で物件のキャッチボールをすれば、いくらでもカネが抜けるからだ。
 05年9月から07年3月までコシ社の役員に就任していたのは、暴力団山口組の三次団体構成員。コシ社で中林容疑者に次ぐ第2位の株主は、暴力団住吉会系の関係者。山口組の企業舎弟はコシ社の物件売買に関与していた。
 高円寺法人営業部の行員がマンションの家賃を肩代わりしてもらっていたのは、コシ社の紹介で三井住友から2億円以上の融資を受けていた自動車卸会社。社長は、路上生活者から名義を借りて不正に取得した住民票を使い、銀行から虚偽の契約で住宅ローンを騙し取った詐欺容疑で逮捕された過去がある。元レーサーの社長が、闇社会の幹部らに詐欺の手口を手ほどきした指南役とみられている。中林容疑者は、彼らのパシリ(使い走り)というのが実態だ。
 三井住友、三菱東京UFJなどを易々と手玉にとった巨額融資詐欺事件で、甘い蜜を吸ったのは闇社会である。事件が、「青年実業家」を気取った詐欺師の逮捕で終わるとすれば、釈然としない。

~了~


【日下淳】

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