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東京レポート

「破産」折口雅博が怯える 「消えた383億円」の事件化(下)
東京レポート
2009年9月15日 08:00

<120億円の運用失敗>
 逮捕状が出た中澤容疑者は、1957生まれで大阪府の出身。同志社大学卒業後、公認会計士の資格を取得して大手監査法人に入社。85年に独立し、大阪市内で公認会計士事務所を開業した。関西で仕手筋として名が通るファッションメーカー創業者のグループに人脈を持ち、業績不振企業の資金調達に関わる会計士として知られている。06年5月には、東京にコリンシアンパートナーズを設立して、投資事業に参入した。
08年10月に東京国税局が中澤公認会計士に強制捜査に入ったのを機に、その資金の流れが漏れてくるようになった。M&Aの受け皿となって手に入れた約180億円を運用するため、主にパートナーズなど2社を使って、企業への出資を繰り返していたという。

 「読売新聞」(09年1月26日付)はこう報じた。

 『投資先は、大証二部の住宅建築会社「東邦グローバルアソシエイツ」(旧「千年の杜」)と、大証ヘラクレス上場の青果卸売会社「ビービーネット」の2社のほか、熊本県内の駐車場運営会社や都内のIT企業、証券会社、米国の新興企業など十数社』

 約180億円のうち、少なくとも約120億円がこうした投資に回ったがことごとく失敗し、納税資金にも窮する状況になったと書く。
 千年の杜については、ファンドを通じて株を握り、実質的に経営権を支配した。同じ時期に、ジャスダック上場のシステム開発会社・トランスデジタルも新株予約権を引き受け傘下に収めている。トランス社は暴力団の企業舎弟が架空増資に関与し、倒産前には小切手や手形が乱発されていた。
 特捜部が中澤容疑者の逮捕状を取った翌日に、元暴力団の男が恐喝未遂の疑いで逮捕された。嫌疑不十分で不起訴処分になったが、中澤容疑者の指示で株の所有権をめぐるトラブルの処理に当たっていたとされる人物だ。
HとMに渡った約200億円は、どこに流れたのか。資金使途先に大物芸能人の名前が登場するが、実態は何もわかっていない。

<最大の謎>
 この事件に、折口雅博氏も無関係ではありえない。深くかかわっているからだ。
 GWGが真の買収者だと知ったクリスタルの林オーナーは激怒。それを鎮めるために、GWGは林オーナーに対し「退職慰労金」名目で約30億円を支払った。東京国税局は退職慰労金としては高額すぎるとし、口止め料と判断して課税処分にした。
 正々堂々としたM&Aであれば、口止め料を払う必要はない。口止め料を支払ったのは、クリスタル買収に疚しさを感じていたからだ。
 クリスタル買収における折口氏の最大の謎は、「他の投資家」である中澤容疑者、HとMの3人に、383億円の法外の利益が発生するスキームを認めたのか、という点だ。容認せざるを得ない弱みを握られていたのではないか、そう疑われているのである。
 巨額マネーに魑魅魍魎が群がった。脱税事件で一件落着する問題ではない。

(了)

【日下 淳】

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