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東京レポート

民間資金活用を謳ったPFI病院が頓挫 失敗して分かった二つの問題点(下)
東京レポート
2009年10月17日 08:00

<高い金利に追われる>
 もう1つの問題は、民間資金の活用にあった。PFI病院から最初に撤退したのは、滋賀県の近江八幡市立総合医療センター。09年3月末でSPCとの契約を解除した。その原因は、病院の建設資金を民間に頼ったことだ。
 総合医療センターは、旧市民病院を移転するかたちで、施設設備費約145億円を投じて06年10月に開院。ゼネコン大手の大林組を代表とするSPC「PFI近江八幡」が建設、運営し、30年後に市に無償で譲渡する契約だった。当初計画では、新築効果を期待して医業収益を年間100億円見込んだ。しかし入院患者が伸びず、07年度は84億円にとどまり、実質赤字は8億5,000万円に膨らんだ。
 市は再建策として、SPCに支払う建設費の金利総額99億円をなくすために、病院施設をSPCから買い取り、契約を解除した。PFI契約を解除したため、市はSPCに違約金20億円、建物購入費118億円を支払うハメになった。
 総合医療センターはPFI契約を解除して、建設資金を市債に切り替えた。その試算によれば、09年度以降、総額43億1,900万円の金利の減額になる。年平均1億4,400万円の減額。30年間で99億円支払う金利が、半分以下に圧縮されるのである。
 それなのに、病院建設費を丸々民間資金に頼った。市の起債でまかなっていれば、当初数年間は元本の支払いが猶予されるうえ、金利返済は半分以下になる。なぜ、金利の高い民間資金を選んだのか。住宅ローンを高金利のサラ金から借りるようなものだ。

<民間側の最大の目的はファイナンス>
 近江八幡市立総合医療センターの場合、30年間にSPCに支払う金利総額は99億円。SPCにとっては、半分を銀行の金利支払いに充てても、残りは儲かる仕組みなのである。
ファイナンスで稼ぐ――建設費はSPCが銀行から調達し、利益分を上乗せして病院に貸し付ければ、利ざやを稼げる。オリックスなど官業の民間開放派がPFI病院に力を入れた最大の理由だ。
 PFI病院に飛びついた自治体は、民間資金を活用すればすべてうまくいくという「PFI幻想」に惑わされたといわざるをえない。
 福岡市は「市立こども病院」をPFI方式で建設するという。大丈夫なのか?

(了)

【日下 淳】


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